【2014年】4月期 ドラマ時評概論

大型連休いかがお過ごしでしょう。
気づけば一度も連なって休むことなく連休も折り返され、後半も連休がないままそうやって日々が続いていくという悲しさと闘っています。
ちゃんと連休を満喫してくださいね。

遅くなりましたが、連ドラ後篇です。今回のクールの見どころを一気に!
もう始まって少し経ちますが、これを読んで少しでも多くのドラマを今から見たいと思う人がいればと思います。

■取り上げるドラマ
『極悪がんぼ』
『MOZU』
『続・最後から二番目の恋』
『アリスの棘』
『リバースエッジ』
『セーラーゾンビ』
『ロング・グッドバイ』
『ルーズベルトゲーム』

多い!今回のクールはマジで神懸ってます。
上記以外にもたくさん面白いのあるんですが、あまり多くても混乱を来すので。
『BORDER』2話を見た後にTwitterに『シュールレアリスム』から『マジックリアリズム』へみたいな事を書いて、次の日にガルシアマルケスが死んだという事に個人的に理論を越えた偶然を感じ、結局『百年の孤独』を読むことが出来た先週でした。
このような日常に風穴を開け現れるアンリアル、これがドラマの本懐だと思います。

しかし、僕は昨日『悪夢ちゃん』の前半部を見逃してしまった訳です。連ドラの時からずっと大好きだった『悪夢ちゃん』ですが、映画化前のスペシャルドラマという事でした。
ちゃんと見て、勝手に青山真治的面影シリーズと呼んでるものを模して、僕も
『悪夢ちゃんスペシャルドラマ』にクリストファー・ノーランの階層性の夢の面影を見たって言いたかったです(言ってる)途中から見たので間違ってはないはずです。

さて始めます。まだ途中なので、あらすじとみどころを固有名詞多めでいきます。

『極悪がんぼ』
脚本が前々回のクールで僕が一番に挙げた『クロコーチ』のいずみ吉紘氏です。いずみさんは『南極大陸』以降、俗に社会派と呼ばれる作品が多くなっていきます。
今回は社会派とは少し違うんですが、舞台は恐らく広島で、裏社会ものというか経営コンサルタントという肩書でもって金を違法に稼ぐ事務所で働くことになった主人公(尾野真知子)がその非道なまでの金の世界で奮闘するみたいな内容です。
俳優陣が豪華で、おのまちもなかなか良い感じで馴染めていると思いました。
これはおのまちの出自の影響があるのではと思います。
あのがざつさと食べ方の汚さ(演技であってもそれが自然にみえる)これは今回の物語にぴったりです。
冒頭いずみさんに触れましたが、今回は今のところバチッとしたいずみ流のメッセージは無いですが、きちんと1話ずつで話をまとめてあって見てて爽快です。
このままずっと最後までいくんだと思いますが、それはそれでいいと思います。
月9らしからぬって感じです。

『MOZU』
これがあんまり話題になってないのがおかしいと思います。
これは香港映画『インファイナル・アフェア』のリメイクを2012年にTBSとWOWOWが共同で2時間×2本という形でやって、そのキャストとスタッフが再結集して作られたものです。
今はTBSで放送されてますが、この地上波連ドラが終わった後にはWOWOWでも続編が放送される予定になっています。
メインキャストは西島秀俊・香川照之に加えて真木よう子。
刑事ものなんですが、事件の同時多発性・謎が謎を呼ぶ展開、全容が掴めない湿ってざらざらした感じは連ドラというよりは映画をみているようです。次回予告とかもなんか凝ってそんな感じになってます。
初回2時間だったんですけど、冒頭の激しい爆破のシーンの恐怖を助長するカメラの追いかけ方、染谷将太の一瞬だけ映った不気味さ、池松壮亮の独特の声など、全てが一つの大きな物語を構成するにあたっての見事なまでのパーツになっているなと思います。こうやって細部まで詰めていけば必然的に綻びは見えてきますが、連ドラでここまでのクオリティを持って作るというのは大変に努力のいる事なのだろうと思うので、自分たちで勝手にハードルあげまくって自爆しないで欲しい、それだけです。
順位はつけれませんし今クールはほんと難しいですが、おすすめ3つあげるならその1つです。

『続・最後から二番目の恋』
これはですね、いまここで語るまでもないですがね。
脚本家・岡田恵和が東京でも沖縄でもない「絶妙な中距離」として鎌倉を舞台に描き切って、完全に後期代表作にしてしまった『最後から二番目の恋』(岡田さんすぐ次とかのクールで『泣くな、はらちゃん』という大問題作作ってまた自身の安定した地位を自ら壊すのだけど)の続編です。
今回はフジが死にかけてるから完全に頼まれ仕事なんだと1話見て思ったのですが、それでも中井貴一と小泉今日子の夫婦漫才的掛け合いはまさに天才的でぐうの音も出ません。
一見本無くてもいいと思わせるような二人のアドリブの応酬ですが、たまにこれはアドリブでは無理だろうというような岡田さんの言葉が出てきます。キョンキョンの「向田邦子か!」という突っ込みに中井貴一が「は?向田さんとは」みたいなのもその例です。家で大笑いさせてもらってます。
このドラマでも少し話題になってますが(故意に岡田さんが入れてるんだと思うけど)
「作りたいものを作る」ことと「求められているものを作る」こと。
これからはこのジレンマをどう克服するかというのが岡田さんが考えていくところでしょう。
初回はほとんど前作ファンのための二人の掛け合い(内輪ネタ)とフジの寒い思考からニースとかパリでロケしちゃうという誤算がありましたが、僕は徐々に良くなってきてると思います。
「テラスハウス」以降若者の町化している「鎌倉」に第二次反抗期である40代の痛々しい現実はその居場所があるのか。そこに居座るという図々しさを持ってしてみえてくるものを見せて下さい。
前作同様批評に富んだ作品なので、最終回まで見たら時評にまた書きたいと思います。
タイトルは、
「鎌倉は、誰のものだ!?」で間違いないです。

『アリスの棘』
上野樹里の主演のサスペンスです。
幼いころ父を医療ミスで亡くした主人公が成長して医者になり、父を執刀した医者や関連する弁護士に仕返しをしていくというドラマです。
あまり期待していなかったのですが、これ無茶苦茶面白いです。
職場における男性的な仕返しをマチズモを前面に押し出して描いたのが半沢直樹なら、これは女性的な陰湿で計画的な仕返しというところでしょうか。
今回のクールで半沢のスタッフは再結集して『ルーズベルトゲーム』をやっていますが、僕は二番煎じというか半沢の成功を商業的な厭らしさ抜きで踏襲出来ているのは、まさにこのドラマだと思います。
2話とかで主人公である上野樹里のセリフに
「娘(自分のこと)が被った痛み云々」というものがあって、これってよく考えたら藤野可織的二人称になってると気づいたんです。
二人称を分かりやすく説明するために僕はよく「神視点」というものを使いますが、これはまさにそうで、復讐に執念を燃やす主人公が一つ高い舞台から(言わば神の視点)から描かれているのです。
この怖さというか、言い知れぬ違和感みたいなのには驚きました。
今からでもまだ間に合います。これを見て藤野可織の『爪と目』や『おはなしして子ちゃん』なんか読んで夏を待ってみるのも乙だと思います。間違いなくベスト3の1つです。

『リバースエッジ』
今回のクールは「出演者のダブり」と「喫煙シーン」が凄い目立っててます。
このドラマの主演のオダジョーも『極悪がんぼ』と『アリスの棘』に出てます。
そんなオダジョー主演で、テレ東24時台に大根仁が『モテキ』以来の凱旋ということろでしょうか。
探偵もので原作あって、出演者も各回ゲスト以外は3人という省エネだけど大根さんの力から雰囲気は凄いあります。
モテキで描いたオタクからそれに完全に敗北したサブカル的世界を、大根さんが描けるようになったのでしょう。人気が出るということはそういうものです。
ドラマの服飾をスタイリストの伊賀大介氏がやってて、昨日の3話がコスプレデリヘルの話だったんだけど、客がこれを着てくれと言って嬢に渡すよく見るユニクロの白地に赤い小さなロゴが入ったビニールの袋からセントジェームスのボーダーが出てきて、それをTwitterに
「リバースエッジの服担当(スタイリスト)か伊賀さんで、今日はユニクロの袋からセントジェームスのボーダーを出した。見事だった。」
と書いたら大根さんがそれ見てくれて、
「伊賀君が本当に凄いのは正にこういうところです。」
とリプ付きのリツイートをしてくれて、久々に大物が釣れた感覚です。
ただフォロワーは5人しか増えなかったです。まだ増えるかもしれませんが。
という事があったので取り上げました。

『セーラーゾンビ』
これは本当に難しいです。
脚本と監修が『ジョゼ…』や『メゾンドヒミコ』で有名な犬童一心というところがまず挙げられます。
ゾンビが大量発生した終末世界で、生き残ってしまった女子高生とその学校関係者が学校に閉じこもって(今のところゾンビは校内には入って来ない設定)純粋に生きることの小さな幸せを見つけていく話です。
言いたくてしょうがないですが、主演は最近僕の3推しであるところのAKB48チームBなーにゃこと大和田南那ちゃんになりますね。これを客観的に見れないのは仕方がない事ですが、僕はなーにゃが出てるから無条件にいいって言っているのではなく、きちんと理論立ててこのドラマの意義を探っていく所存です。
それは、演技とか云々以前に世界が終わりを迎えた時とかに見える終末と近接する穏やかさとしての壮大なファンタジーとしてなのか。
セーラー服と手持銃、快感と疎外感、警戒区域と風評被害というようなリアリティなのか。
まだ分かりませんが、これは当面の僕の課題です。取り敢えずベスト3の1つです。

『ロング・グッドバイ』
これは言わすと知れたレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説です。
1月ぐらいからNHKでドラマ化されるという事で話題になってました。
なんてったって、脚本・渡辺あや、音楽・大友良英、主演・浅野忠信ですからね。
通好みというか、NHKの「ドヤ顔」感が浮かんでくるような内容になってます。
5話完結で今日3話目だから、もう折り返しですが、普段ドラマ見ないって言ってる(その人たちは普段ドラマなんか見ずに難しい本や映画、異国の音楽を聴いている高尚な趣味をお持ちの方です)人たちには「このドラマは面白い」と騒いでるようですので、勿論超がつくほど洒落てますしこだわりが細部まで行き渡ってますので、そんな方におススメです。

『ルーズベルトゲーム』
実際まだ1話の半分しか見てないですが、唐沢と江口が同じ画面に映ると見えるのはてっぺんの方がかすんでいる巨塔なんだなという事が分かりました。
織田裕二と石黒賢でも同じように今でも「YAH YAH YAH」が聞こえて来るのかとか真剣に気になるくらいです。
前述したように、半沢スタッフ再結集で池井戸ドラマです。
これは世間的には当たるでしょう。30越えて終わって欲しいものです。

そんな感じで、話題と期待で膨らんだ作品ばかりの今回のドラマたち。
まとめますと、僕のおススメは「MOZU」「アリスの棘」「セーラーゾンビ」
ちなみに評論家でサブカルにも造詣が深い宇野常寛氏のTwitterを引用させてもらうと、

春ドラマ。一通り出そろったけど、僕のおすすめは「続・最後から二番目の恋」「ロング・グッドバイ」「セーラーゾンビ」の3本。世間的には「アリスの棘」と「ルーズヴェルト・ゲーム」が当たると思う。

「最後から二番目の~」は主役二人のやりとりのもつ幸福感をいつまでも味わっていたい、という視聴者の願望に最大限応えてて、そしてそのためにそれ以外の細かいところもいろいろ工夫しているところがいい。楽しんでつくっている/演じているのもよく伝わってくる。

「ロング・グッドバイ」は、あの徹底した作り込みで、まあ、多少の空回り観も含めて味にできている。後半再登場したときに綾野剛の演技が役に耐えられたら名作になると思う。しかし小雪をこの手の役に使うのは食傷気味。笑

「セーラーゾンビ」はAKBが出ていなくてもたぶん観ていたと思う。このささやかな幸福感を伴った終末のイメージが妙に心地いい。B級深夜ドラマらしいチープな画面作りも、いい方向に作用している。向井地 美音の巨大おしゃれゾンビは、笑った。

ということでした。これも参考までに!
さて散歩がてら、蕎麦食いにいくかな!よいながめの週末を!

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