Urban Liberal Arts & Post-Truth Stories for the People

懐かしさにある不思議な実存

「思い出のマーニー」仕事終わりで観て来ました。
僕はそれほどまでにジブリに思い入れがあるわけではなく、ましてやアニメーションは僕の中ではかなり少ない方の専門外的文科系コンテンツです。だから将来自分の子供がアニメが見たいななんていうもんなら「ファンタスティック Mr. Fox」を与えて、この中にアニメに大切な事全部詰まってるからこれだけ見とけばいけるでとか本当に言おうと思ってます。

ジブリ作品が新しく公開される度にそんな事を言い、2chのジブリタイトルを組み合わせて一番面白い奴が優勝っていうスレが楽しみであったりするのですが(今回優勝「こんなん坂ちがう崖やんおすなや」次点「恩をカタクリコで返す」)
今回のマーニーはポスト宮崎駿という部分で個人的に関心がありました。

感想を一言で言うと、観て良かったです。
前述したポスト宮崎駿という側面が作品には如実に顕れていました。
宮崎監督が耕してきた広大な敷地の畑を、敢えて避けながら作られたと言っても過言ではないと思います。その避け方が、宮崎監督のフィールドを挟むようになされていたという印象がありました。
現実と虚構の範囲の中である意味凝り固まっていた宮崎監督の創作の域を、一方で具体的な地名や電車の時刻案内版、冒頭の子供が沢山いる公園のシーンなど現実を露骨なまでに根づけさせる描写で示したり、夢であることを明らかに示す靄のかかった虚構の描写(最後の作品「風立ちぬ」で宮崎監督も使ってるんだけど、それまではあんなことはしなかった)であったり、今までのジブリアニメというイメージで見ると正直違和感を感じるシーンも沢山出てきます。監督の米林宏昌さんも脱宮崎は意識したと公言してる通り、それが最も如実に顕れたのが作品の直接的なテーマにも大いにかかわってくるこの「現実と虚構という二つの世界の描き方」だったと思います。

もう一つ脱宮崎の要素として大きかったのが、米林監督の「ノンポリ」というスタンスだったと思います。
別に宮崎駿がそのすべての作品に自身の政治性を投影させていたと言われれば僕はそれは分かりませんが、「風立ちぬ」での今まで小出しに見せてきたマッチョイムズな部分がぶちまけられたり、有名な「風から水へ」という宮崎監督のイデオロギーは、政治との結びつきで語られるという事が非常に多かったと思います。
しかし、僕が見た中では今回の「思い出のマーニー」にはそのような監督個人のイデオロギーのようなものは感じられず、監督自身も客観的に作品と向き合いながら、映画を通して大切にしていた「思い」が自身のイデオロギーなどとは別のところにあるのだなと実感することが出来ました。(この「思い」については後述します。)

さらに見どころを挙げるとすると、美術監督を種田陽平さんがやっておるということでしょう。
これもジブリでは初めての試みで、これもまた物語の重要な要素である、思春期を迎えた少女が背伸びし見たくなる端緒を絶妙のタイミングで切り取った雰囲気を備えていました。杏奈とマーニーが出会う洋館や杏奈がひと夏の間暮らすことになる部屋の雰囲気などがまさにそれにあたります。

種田陽平さん美術展やるみたいです。
http://www.marnietaneda.jp/exhibition/index.html

一度はこういう異国情緒のある建物やインテリアに憧れた(少女の)気持ちでもってすれば、より鮮明にこのアニメの素晴らしさを吸収できたのではと思います。この感覚に於いては、先日発表された芥川賞の受賞作となった『春の庭』とも少しかぶった部分が見受けられます。
つまりこの作品は、「マイノリティの意識」や、少女版「大人は判ってくれない(トリュフォー)」というジレンマを抱えた経験のある少女経験者のすべてに拓かれた物語だと思います。
前述した米林監督の「思い」はまさにここにあたると思っていて、この少女が感じる人生における一時の「輪の外にいるという感覚」その痛みの経験のある人に懐かしさを纏って現れるのがマーニーという共通の赦しの存在なのだと思います。
公開前は百合映画と言われていましたし、僕もそうなのかと思って観に行った節もありましたが、それは全くの間違いだと思います。
安奈つまり少女の「好き」は憧れと懐かしさの中にあり、それは情愛とは少しずれたところに存在してると思います。
この微妙な心の中身の位置取りなんかは僕は見てて繊細で良いなと思いました。
ただ、ここからネタバレになりますが、安奈が懐かしさを抱くには少し年齢が若すぎるし、結局マーニーという実体と拘わった存在からの伝聞という形で物語が終わるという部分に、物語としての甘さを感じました。
安奈がもっと大人になってから自分で自分の少女時代を回顧するような回想録のような形で物語全体を包んであげればもっと良かったのではとそんな偉そうなことを考えたりもしました。
最後に声優ですが、マーニー演じた有村架純ちゃんが良かったです。
良かったんですが、途中からマーニーの天真爛漫な性格から溢れる笑い声や、細かいことに頓着しない大らかな振る舞い、単純に声の質感などがだんだんと凄く聞き覚えのあるように思えてきて、絶対これ誰かの声だとマーニー出てきてから10分ぐらい考えることになりました。
そして、僕は気づくのです。世界の真実に。

そう、その声は、僕の推しであるところのこじまここと小嶋真子さんの声にそっくりなんです。その瞬間全ての整合性が取れ、それから僕はマーニーに声を当ててるのはこじまこなんだと一ミリも疑わなくなりました。
そしてこの究極のシンクロによって僕はこの作品を人より何倍も楽しめました。こじまこのジブリデビューに立ち会えたのです!

みなさんもぜひ劇場に。

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