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【2014年】4月期 ドラマ時評 各論①

物語と想像力がもたらす力というものを自らの手で証明します
【2014年】4月期 ドラマ時評 各論① Posted on 2014年8月13日
物語と想像力がもたらす力というものを自らの手で証明します

4月クール連ドラ、その2です。
『BORDER』
『MOZU』
『ロング・グッドバイ』
『リバースエッジ』
『アリスの棘』
の順に書いてます。

早速いきます。
僕は基本的にメモを取りながらドラマを見るのですが、最終回までに見終った時メモの総量が圧倒的に多かったのが『BORDER』でした。
ドラマ評論家の評価も軒並み高く、初回で圧倒的な世界観を示した裏番組の『MOZU』に視聴率でじわりじわりとにじり寄り、ドラマ中盤から後半にかけてはかなり話題になった作品です。
この作品が面白かったのは、死者と対話できるという設定にリアリティを吹き込み続けた金城一紀脚本の手数の多さと、それに伴う連ドラに於いては極めて異例とも言える小栗旬演じる石川という刑事の一人称視点の歪さだったと思います。
また、最終回のエンディングも連ドラとしてはかなり異質なものでした。(特にテレ朝の刑事ドラマとして考えると)
主人公が捜査中に拳銃で頭部を撃たれた後遺症により死者と対話が出来るようになる、つまり死者(被害者)との対話から犯人(加害者)を捕まえるという設定で物語は進行していきます。
勿論これだけを読むとなんてつまらない子供だましのような話なんだと思うかもしれませんが、それが案外一筋縄ではいかないのです。
露骨に表には出ないものの、作品から暗に漂うのは「特殊能力というジレンマ」というものでした。
つまり、人知を超えた能力に悩む青年が、その不安定な立場から幾つもの境界(BORDER)線上を彷徨う様を描くことによってメッセージを伝えていきます。
最初撃たれた主人公が対峙することになる「生」と「死」の境界が、次第に「善」と「悪」という境界にとって変わっていき、最終回では、主人公が越えてはいけない一線を越えたところで不敵に微笑み幕引きを迎えます。
正攻法を貫いた主人公の末路が意図せずとして「悪」の端緒だったというオチの部分を、ストーリーを帰納法的に使いながら今の社会システムに対する強烈な風刺(正攻法という生きにくさや同調意識に重きが置かれる現代社会批判)に転換するあたり、見事だったと思います。
主人公を助けるハッカーや素性を明かさない闇の組織の人間がフラットに描かれていることから、作中の匿名性や中庸性みたいなものがチープな俗世のメタファーと捉えられるし、その中で、圧倒的で緻密な「悪」と対峙する、中途半端であっても「善」というのものを信じ貫こうとする主人公の立ち振る舞いによって、非現実ではあるけれどもドラマチックなコインの裏と表、「善」と「悪」の存在感が強烈に浮き上がっていました。
しかも、そのコインの裏と表がすり替わる瞬間だけではなく、どうしてそのような事がおこってしまったのかというところまで踏み込んで描かれていました。
設定やテイストを曲げることなく、しかしラストでは現実的かどうかの問題ではなく(幻想でもいい)、起こってしまった事実を描ききるという脚本の文脈にも今までのテレビドラマにはない新しさを感じました。
また小栗くんも難しい設定の役柄ながらすごくよかったです。

それと対をなすのは『MOZU』ですね。
期待値は圧倒的にこちらの方が大きかったと思います。WOWOW×TBS共同制作の『ダブルフェイス』も良かったですし、その制作チームとキャスト集結で民放連ドラに挑んだ訳ですから、日本の連続ドラマ史にも爪痕を残せてもおかしくなかったと思います。
後にWOWOWで放送され、この秋TBSでの再放送も決まったシーズン2も含めての感想です。
特筆すべきは、まずその映像のスケールや凝ったカメラワーク、映画のトレーラーを意識した予告などだと思います。制作陣の「映像で魅せたい」という意欲は伝わってきましたし、実際あの映像を映画館で流されても遜色ないと感じました。つまり既存の連ドラでは決して見られない映像世界はあったと思います。
また、暴力的な描写や喫煙のシーンなど、攻めを貫く姿勢も随所に現れていました。
さらに面白かったポイントを挙げるとするなら、長谷川博己という役者のキャラについてです。
現在押しも押されぬ人気のイケメン俳優長谷川博己のある面白い法則に『MOZU』は気づかせてくれます。
実は、彼が今まで連ドラで演じてきたキャラクターというのは全部微妙に欠陥人間(三枚目)なんです。
セカンドバージンや鈴木先生、ミタの父親役など。
その長谷川博己演じる欠陥人間キャラの集大成が今回『MOZU』で東という頭のおかしい人間を演じたことによって炸裂しています。
ただ連ドラという枠で考えた時に、ラストぎりぎりまで話が停滞してしまっている印象が強く、かと思えば同時多発的に事件起こり急展開のラストを迎えたりと、ペースが掴みにくかったという印象は拭えません。
正直乗っかりにくかったです。
特に、明確な敵役を設定せず、社会に蔓延る見えない何か「大きな力」という真相に向かっていくという構図は連ドラとしてはハードルが高く(ダークナイトのジョーカーを思わせる安易な演出)、作品自体にはそれを打開する伏線等も十分に用意はされていたものの、伏線を回収しきった時の衝撃や腑に落ちる清々しさがそれほど体感できなかったのではと思います。
上記で触れた長谷川演じる東含め、絶対死んだろと思った殺人鬼が生きてたり(寧ろ生き返った?)拳銃で打たれまくった主人公が即退院現場復帰など、必要な描写であることは解るんですが、リアリティを奪ってしまう展開にも難があったと思います。
そのせいからか、もはや海外ドラマのパロディ的なネタドラマとして機能しかけているところに哀しさが積もりました。やっぱり日本でこういう奥行きで勝負するテイストの連ドラは万人受けしないのでしょう。

次『ロング・グッドバイ』いきます。60分×5回の連ドラとしては短い方だったと思います。
脚本・渡辺あや、制作・城谷厚司のカーネーションコンビ。音楽は大友良英で、役者も浅野忠信、綾野剛、小雪など、まさに超豪華な布陣でチャンドラーの原作の同名小説の映像化にNHKが本気で挑んだという意欲作でした。
結論から言うと、やっぱりNHKの本気は凄いですよ。ここ10年ぐらい日本の連ドラはNHKの一人勝ちが続いていて、まさにその有様を見せつけられているようでした。
しかし、裏を返せばそれだけでした。
脚本もそれなりに良く出来ていて、時代を的確に捉えた絢爛豪華なセットや後ろで寸分違わず調整されかかる音楽などその全てにセンスを感じるのですが、他の特に民法ドラマを比較したときにNHKの自意識過剰な演出が物凄く鼻についた印象を受けました。
作品の時代観や原作がチャンドラーという事もあり、例によって高尚な趣味をお持ちのお洒落さんたちの間ではツイッターなどでこのドラマの反響がかなりあったようで、試しに覗いてみると「普段はテレビドラマなんて見ないのですが、このドラマは本当にいいです」みたいなツイートばかりで……ん?
いや、なんで普段ドラマ見てない奴が盛大にNHKの過剰な演出に釣られてドラマの出来の良し悪し堂々と語っちゃってるのよ…正直「官兵衛」の方が全然完成度高いから、もっとNHKのドラマだけでも沢山見たほうがいいよオサレさんたち、的な。
そんな話も含めて、拭えなかった小手先感がありました。期待しすぎたってのもあるでしょう。

『リバースエッジ』
逆に、その小手先感を最大件に利用したのがこのドラマの凄いところでした。
脚本・演出の大根仁が描いたベタな探偵ものです。
主な出演者をオダジョーと石橋蓮司と小泉麻耶と3人に限定することでごちゃごちゃ印象を与えず、各回ごとの話がとてもスムーズに入って来るように感じました。
このドラマがハードボイルドとして成立してるかは疑問も残りますが、金曜24時台で求められているニーズというものに的確に作品を嵌め込む大根さんのセンスの良さは抜群に光っていて、それを楽しむドラマだったんだと思います。
無論、大根さんはこの作品を〝敢えて〟力を抜いて作っていた気がします。
その効果からか、1話完結の物語には笑いあり涙ありの人間的で自然な豊かさ、無駄から発生する心地よい余裕が存分に感じられました。特に3話以降は文学性に富んだ短編小説を読んでいるようでした。
エンディングの感情的でナイーブなEGO-WRAPPIN’の音楽や歌川国芳の髑髏の日本画にぴたっと合わせるような脚本、もはや錯覚だろうとしか言えなのですが、日常の風景をふと異世界へと連れ去り、例えば幸せに包まれた気を起こさせる各回のエンディングの表情は、もはやテレ東金曜深夜というドラマ枠での物語に留まらず、僕らの生活レベルとしての金曜日の夜と言うものに物凄くマッチしていて、この虚構と現実が綯い交ぜになる深夜1時の瞬間を味わえたという部分を含め素晴らしかったと思います。

『アリスの棘』
僕が前回のクールで恐らく一番先が気になって見ていたのがこのドラマだったと思います。
最初「半沢が男の復讐劇なら当作は女の復讐劇についてだ」みたいな宣伝文句が打たれ、色々な意味でのセンスの無さから駄作の予感がしていたのですが、期待せずに見た1話のインパクトがかなり大きかったです。
簡単にあらすじを書いておくと、幼いころ医者であった父を病院内のトラブルで亡くした娘が、自身も医者になって父の殺された原因を探るとともに父の殺害に加担した加害者に次々と復讐をしていくという話です。
父を殺害した主犯らしき人物に復讐を遂げ初回が終わるという展開から、これで最後まで話が持つのかと正直不安になるくらいの飛ばしっぷりでした。
その後、父の死の真相を巡って深い因縁やその他多くの関係者がいることが判明していき、復讐という目的から生まれる主人公の動機のみで、物語は初速を失うことなく進んでいきます。
注文をつけるとするなら、オチの黒幕がベタだったり、主人公が自身の務める病院内で復讐しまくるのでその病院のドクターや関係者が死にまくるという非現実な展開となるところでしょうか。
しかし、次のターゲット次のターゲットへと脚本が誘導するので、来週がまた気になるという連ドラの純粋な構造を上手く活かせていた十分に楽しめる作品だったと思います。
主人公演じた上野樹里の演技も見ごたえがありました。あの血の通っていないような冷徹な表情は女性の中でも限られた人にしか出せないものだなと思いました。
前述したオフィシャルな意味での「女版半沢」として高視聴率を記録した『花咲舞が黙ってない』は明確な1話完結の構造で臨店という設定からも、半沢の成り上がりものというより水戸黄門のようだったという意見も多く聞かれました。
そういった意味でも、当作は粗削りでリアリティを欠きながらも、上野演じる女医の復讐劇という物語の体裁は、半沢のそれと似た部分も多くあり、このドラマこそ爆発的な人気出てもおかしくなかったかのように思います。
ではなぜ当たらなかったのか(そこそこは数字取れていましたが)。それをもっと深く考えることで、今後のドラマにとっても新しい発見があるのだろうと思います。
半沢以後の保守的連ドラのたたき台としては僕は評価に値すると思います。

明日は4月クール第3位『セーラーゾンビ』に触れます。
一本で今日と変わらない分量になった力作です。
お楽しみに!

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宝田 とまり
宝田 とまり
物語と想像力がもたらす力というものを自らの手で証明します

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