Posted in 散文 映画&テレビ

【2014年】テレビドラマの総括

【2014年】テレビドラマの総括 Posted on 2014年12月31日

こんばんは。気づけば、2014年もあと僅か。
年末になるとテレビやネットでは「今年を振り返ろう」みたいなものをよく見かけます。5年ぐらい前はこんな煽り文句みたいなのが世の中に氾濫していることもなかったなと思うのですが、なんと言っても今や一億総表現者ですからね。時代です。
「今年なにやってたかといえば、友だちとやたら人狼してた。楽しかったなー(古市憲寿)」みたいに今年の総括を1行ぐらいでスマートにまとまれれば一番いいのですが、かくいう僕もここ数年は1年を総括する意味で主に「フィクション」において個人的なベストコンテンツを文章にしておくというやっかいな習慣がありまして、せっかくなので今年もそんなこと書きながら2014年の皆さまとお別れしたいと思います。お世話になりました。

今年は本当に話題に事欠かない年だったと思います。
ざっと振り返っても、
・オリンピック
・ワールドカップ
・集団的自衛権限定容認
・消費増税
・解散総選挙
などといったスポーツ・政治の分野から、
ワイドショーを連日賑わせた会見ラッシュ、
個人的には一番大きいと思う「いいとも」と90年代以降のテレビというコンテンツの終焉、(テラスハウス終了も別の視点で意味があった)、
また、手広く話題を押さえようと心掛けつつもアナ雪と妖怪ウォッチにピクリとも触手が動かないなんてこともありました。

まぁそんなノンフィクション・政治・メディア関係の事は池上彰と文科系トークラジオLifeに任せて(ベタにどっちも神コンテンツと信頼しきってます)、僕がここで振り返るのは
「テレビドラマ」
「映画」
「本(主に小説)」です。
もちろん2014年に新しく登場した作品のみに絞って話していこうと思います。

前口上はこれくらいにして、まずは、2014「テレビドラマ」の総括をお送りします。

 

今年は去年にも増してたくさんのドラマを見ることができました。
去年の連ドラ界は半沢とあまちゃんのブームによってここ数年の停滞から一転、復権の兆しを湛え、かなりポジティブな形で今年を迎えたという経緯があります。
そんな今年、果たして連ドラの成果というのはあったのでしょうか。
まず、今年のベスト5を発表しつつ個々の作品に触れながら、先日終わった10月クールの連ドラについて詳しく書いていこうと思います。

今年も相変わらずNHKのドラマのクオリティが高かったです。
なので、今回のベスト5は民放のドラマのみということにしNHKはNHKでその後少し触れたいと思います。

 

2014年・個人的連ドラベスト5

第1位 続・最後から二番目の恋(フジテレビ4月期)
第2位 Nのために(TBS10月期)
第3位 なぞの転校生(テレ東1月期)
第4位 ファーストクラス第1期(フジテレビ4月期)
第5位 BORDER(テレ朝4月期)

クールごとに作品の面白かったポイントとか書いてきたので、改めて全ての作品を解説することはしません。(気になる方は過去のエントリーとか振り返ってみて下さい)
その中から今回はベスト5に挙げつつもきちんと触れていない「続・最後から~」と「ファーストクラス・第1期」について書いていきたいと思います。
そして、今年最も美しくまた驚きを齎してくれた「Nのために」については、この後の10月期ドラマのところで触れます。

 

・40代の二度目の反抗期を巡って~岡田惠和が目指したぬるくてイタいそれでも未来に恋する新たな理想郷
今年の年間ベストに推しました「続・最後から二番目の恋」です。
2012年1月に、小泉今日子・中井貴一・飯島直子・坂口憲二・内田有紀を中心に90年代トレンディードラマ全盛期の風を吹かせまくって登場し、カルト的な人気を博したドラマの続編です。そう続編なんですよね。続編を1位にするのは正直抵抗がありました。そして、まさかこんな早く続編が制作されるとも思っていませんでした。
作品のテーマである「40代50代のライフスタイル・価値観」みたいなことを脚本家の岡田さんは前作でほぼ完璧に描き切ってしまった感があり、今作は続編を待ち望んでいるファンに前作の焼き直しを再度提供できればというフジの打算を反映した作品になるだろうと思っていました。
が、初回を見たときにはその予想を上回るほど酷い出来でした。
もちろんこのドラマの魅力の一つは、どこからどこまでが台詞かの判断もつかないアドリブ込みの会話の応酬(CMによって辛うじて二人の会話が途切れる、いやCM中すらしゃべっている気もする)にあるのは確かで、そこに期待している視聴者も多いでしょうが、個人的にはその会話から浮かび上がってくるものにこそこの作品の真価があると思っています。
しかし初回ではそこの部分は軽視され、二人の会話に徹した喜劇的なテイストが展開されていたのです。大いなる不安と退屈に襲われました。
ただ、そのような過剰な演出や受け手に媚びるような展開も回を重ねるごとに取れていき、次第に存在感を示していった昨今の連ドラには珍しい「ベタが許される作品の風潮作り」つまり、視聴者の9割が【こうなって/こう言って】欲しいというニーズにベタに応えることで歓声が上がる構造(これは最近の連ドラではあまり重要視されない)や、ラスト付近では遂に単なる会話劇を超えたテーマへの言及の部分、岡田さんの書く台詞一つ一つも際立っていったと思います。
今回新たなテーマとして、自分が人生に於いてこれだと信じてやまなかった事を30代・40代にして遂に“諦める”ということが設定されていて、個人的にはまだそこには共感できなかったのですが、そのテーマを踏まえた上で「人生とは未来に恋することだ」みたいな小泉今日子のナレーションがきちんとあり、イタいんだけど大人の余裕と生ぬるさみたいな緩やかな繋がり意識を元に共同体を作ろうという明確な結末においても、ここ最近の岡田さんが一貫して描いているテーマと重なっていると思いました。
冒頭でも書いたように続編を年ベスにすることには抵抗がありましたが、今年は岡田さんの年と言っても過言ではないことを勘案すると、やはりこの位置でもおかしくないのかなと思います。
ここからは最終回を見た後での自分のTwitterの感想を転載しますが、少しトリッキーな論旨になるので流して下さい。
岡田さんの“態度で示す”という脚本には凄みがあった。
どのドラマでも最後に目にする「このドラマはフィクションです」と注意書きが、このドラマにとってはかなり特別な意味を持っていたと思う。
多様性の問題や本来は共感できないにも関わらず何となく分かってしまう感じなど当作には様々な切り口があるが、特筆すべきは「ただフィクションに徹する」(フィクションができる)ことから生まれるリアル、つまり完璧に装われたリアルというものがメタ的にフィクションというかもう少し狭義なところで言えばテレビドラマが果たす役割は何かというところにまで言及しているということについてだ。
どんなにリアルを繕っても、冷静に考えればやはりあれは完全なフィクションでしかない。年齢とか職業とか人柄とかタイミングと含めて全てにおいて。
ただ、それを「会話のリアル」を用いることで偽装し、あたかも日常の風景を切り取ったように作る。ふとした寂しさや恐怖・幸せなど、現実でも直ぐに忘れてしまいそうなひと時を切り取っては繋いでを繰り返し、あたかもあの世界が存在しているかのような錯覚に陥らせてくれる。
その表側のリアルと、裏テーマとして挑戦しているフィクションへのメタ的な追及への回答などは今後の連ドラ作りの大きなヒントになると思った。
おしまい。

 

・ヒエラルキーを超えたマウンティングという新概念
次、沢尻主演の「ファーストクラス」です。
これもフジの苦肉の続編策に該当する作品で、4月のクールに23時台にやった作品の続編が早くも10月クールに作られたという異例さが話題になりました。
僕がベストで挙げたのは4月の第1期の方で、今クールで裏の綾瀬ドラマに大敗した第2期については10月ドラマのところで取り上げようと思います。
1期には遠く及びませんでしたが、少なからず2期も綾瀬ドラマより断然良かったです。

さて、ご存知の方も多いとは思いますがまずこの「ファーストクラス」というドラマがどんな話だったのか、簡単に書いてみます。
とても単純なストーリーです。ちなみにこれから書くのは1期のあらすじです。

ファッション業界で働くことを夢に見ながら衣料材料店で働いていた沢尻演じる吉成ちなみがとあるきっかけで「ファーストクラス」というファッション誌の編集者として働くことになり、しかし職場の苛めはえげつなくて、それでも自身の夢の実現に向けひた向きに頑張る。
といったところでしょうか。

話としてはありきたり過ぎるくらいです。
では、どこが面白かったのか。
個人的にはポイントが2つあると思っていて、1つは「有り得ないほどの全てにおいて過剰な演出」、そして2つ目「破綻しそうでしなかった太い脚本」です。
1つ目の特徴は挙げればキリがないです。
声にしなくとも画面から十分に伝わってくる意地汚い女性たちの心の声を全て可視化する手法や(吐き捨てられた全ての悪口が職場中に垂れ流される)、中盤あたりから見るのが辛くなるほど最後まで主人公に味方が一人も出来ない状態、マウンティングという今年の流行語にもなった強者の強者のための世界観(ヒエラルキー上位者がさらにその中で格付けし合う構図)など華やかながらその反面シビアでゴシッピーなテイストがふんだんに盛り込まれています。
恐らくこれらは海外ドラマが影響も大きいと思います。
ただ、このような一見ぶっ飛んだ特徴たちを日本の連ドラという枠に落とし込み、今まで見たことのないような作品としてポジティブに機能させたことはこのドラマの成し遂げた大きな成果の一つだったと思います。
上記のように、今までのテレビドラマには見られなかった型破りの構図を詰め込み実験的に作られた代償として、実際細部にはたくさんの綻びが見られます。後から考えるとこれ何の意味があったのかなという突っ込みどころ満載な展開、またストーリーとしても沢尻があの手この手で毎回苛められ今度こそ万事休すかと思いきや呆気なく乗り越えるなんてことも一度や二度じゃなかった気がします。
ただこの作品は、クオリティの高い作品を目指そうというこだわりではなく、やりすぎた結果生じた綻びなどには手を回さない(回せない)俗っぽさを作品の特徴としてプラスに考えるべきだな思います。
例えると、「効くかどうかは関係なくて、効くと思って飲むことが大切なんだ」という根拠のない論説のような感じで、もちろんシリアスなドラマなんですが、その魅力はシニカルや否それを通り越してコミカルの領域での魅力があったと思います。

さらに、前述した細部の綻びやこぼれた部分ですらプラスに変えた要因こそ、二つ目の魅力として挙げた脚本の力だったと思います。
残念なことに第2期では変わってしまうのですが、第1期の脚本は渡辺千穂さんが担当していました。この脚本が素晴らしかった。
物語的には、沢尻が苛められ窮地に陥りながらも毎回辛うじてふりだしに戻ってはまた苛められの繰り返しなのですが、その中でも縦軸として一つ明確な線が脚本で設計されています。それは主人公の決して諦めない心に寄り添い、その心を乱すために多角的な揺さぶりをまた脚本上で仕掛けざるを得ないのですが、その結果細部で破綻を来たしつつも物語全体としてきちんとコントロールできているがゆえに全体としてはすっきりとまとまった印象を受けます。
この薄皮一枚で一貫性を保ったストーリーと、主人公の最後まで諦めない心理状態というのは見事にシンクロしていました。
また女性脚本家ならではの視点、ファッションは時代の写し絵ということが説得力を持って説明されたり、女の子が如何にして雑誌に憧れるかという話(復刊で話題雑誌のオリーブにも触れられていた)、女性には何かを犠牲にしないと掴めないものが存在するという固定概念に対するアンチテーゼなど、まさに女性目線からの言及というのも多くみられました。
また、このドラマには多種多様の女性が出てきまして、そのキャラの設定も抜群に良かったです。
キャラ的な観点から見ると、このドラマは板谷由夏と菜々緒のツートップが沢尻を食っていたなと思います。
菜々緒は下世話なまでの消費者金融感(CM出てるし)丸出し台詞を駆使し(1期の時点で既に妖怪ウォッチを絡めたりとアンテナはマジで高い)最高の痛キャラへと成長していきます。その痛さが構造上拭いきれない細部の綻びと見事にシンクロしてしまってそれはそれはもうサム過ぎ目も当てられないほどです。 ただ、最終的ににどの人物にMPVをあげようかとなった時には、恐らく殆どの人が菜々緒だと答えるくらい、キャラ立ちしたパンチある人物だったと思います。
それとは対照的に、最後の最後までラスボス感を崩さなかった板谷由夏演じる編集長の不動なまでのキャラクターにも凄みを感じます。
先ほど沢尻の諦めない気持ちがこのドラマの縦軸を作っていたと書きましたが、今考えるとそれに加えて板谷由夏演じる編集長の究極的にフラットな設定もこのドラマの一貫した態度に貢献していたと思います。
ほかの人物たちが裏切りや鞍替えみたいなこと心の声を露呈させながら繰り返していく中で、編集長だけはどんなときもフラットでぶれない存在として描かれていました。
別に板谷由夏が好きとかではないですし、作中のキャラは到底自分の好みとはかけ離れていますが、純粋に魅力的な方法で新しいタイプの人間が描かれているなと思いました。あのキャラクターに憧れる女性がもっとたくさんいればと思います。
多くの人を魅了する力のある女性像だと個人的には強く思います。
それは板谷由夏のキャラクターを引き出す演技というところにも要因があるのでしょう。なので、これはある意味板谷由夏主演のドラマだったと僕は思っています。

 

と、ここまでベスト5に入った2作について書いてきました。
あとドラマについては先週ぐらいで最終回を迎えた10月期の作品について触れておけばと思いましたが、大切なことを忘れていました。
そう、NHKのドラマについてです。
NHKを年間ランキングに入れてしまうと、NHKが上位を独占するという民放にとっては非常に酷な展開になるので控えました。
なので、ここで少し紙幅をとって触れておこうと思います。
僕が2014年に見たNHKのドラマで面白かったのを挙げると、
「プラトニック」
「聖女」
「さよなら私」
「昨夜のカレー、明日のパン」
(「軍師官兵衛」)
個人的に今年の頭の方のドラマはあまり見れてなくて、例えば「紙の月」とか「55歳からのハローライフ」など話題になったものを見ていればさらにNHKの上位独占も考えられたと思います。
結論を書くと、今年一番面白いドラマを作ったのはNHKです。
プロデューサーや演出の手腕も大きいと思いますが、視聴率を気にせずある程度自由に脚本家が書けるというのも大きいのでしょうかね。
官兵衛については久しぶりにほぼリアルタイムで見られた大河で、特に前半が面白かったです。魅力的な女性が殆ど出てこないということはマイナスかなと思いますが、男ども(特に取り巻きの3人濱田岳・高橋一生・もこみち、と最後に目つきが変わった松坂桃季)は良かったです。及第点でしょう。

上に挙げたNHKの中でも「さよなら私」と「昨夜のカレー、明日のパン」は10月期なのでそこのところで詳しく触れたいと思います。

取り敢えず時間的に年内は終わりです。
「10月ドラマ編」「映画年間ベスト」「小説年間ベスト」は来年の発表になってしまいます。三が日がんばって書きますので、楽しみにしておいてください。

では、また来年!