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市川崑『股旅』 時代劇のロードムービー

シミュラークルあるいはシュミラークル。ポスト・トゥルース的、何ものでもない何か。
市川崑『股旅』 時代劇のロードムービー Posted on 2015年5月13日
シミュラークルあるいはシュミラークル。ポスト・トゥルース的、何ものでもない何か。

今日は、台風一過でしたね。外は夏を感じさせる陽気で、オフィスはとても寒かった。クーラー24度に設定するの、やめてほしいなあ。
ところで、昨日は せっかくの台風だから相米慎二の『台風クラブ』を見ようと思ったのだけど、気づけば市川崑の『股旅』という映画を見ていました。

おそらく先日『傷だらけの天使』の代々木会館を見に行った影響だと思います。

『股旅』は1973年の市川崑 監督作品で、日本アート・シアター・ギルドの作品です。

脚本は谷川俊太郎、主演は萩原健一・小倉一郎・尾藤イサオです。
ジャンルというか、どんな映画化というと、簡単にいえば「時代劇設定のロードムービー」です。
クールな映画です。

時代劇なのだけれど、時代劇特有の湿っぽさみたいなものはまったくなく、シニカルで無味乾燥、そしてヒリヒリした空気感のある映画です。
方向性としては、『俺達に明日はない』とか『イージーライダー』に似た雰囲気で、あるいは、無軌道に生きる若者映画としては『トレインスポッティング』なんかに近い気もします。

上に、『傷だらけの天使』の影響と書きましたが、
この映画の前年の1972年に市川崑がテレビドラマで監督をしたのが『木枯し紋次郎』で、この映画の翌年に萩原健一が主演を飾ったドラマが『傷だらけの天使』です。

この時代のこの3つの作品は、僕はとても好きなのだけれど、
どれも暗くてザラッとしたアンチヒーローを描いた作品です。

 

▼ 『木枯し紋次郎』オープニング


木枯し紋次郎 – YouTube

 

ちなみに、この年代の音楽の代表的なところをあげると、
大瀧詠一『大瀧詠一』が1972年作品、細野晴臣『HOSONO HOUSE』が1973年作品、井上陽水『氷の世界』が1974年のヒットです。

こっちもわりとみんな暗いですね。(切り取り方の問題だけれど。)

「1960年代の政治の時代が終わり、1970年に三島由紀夫が自殺し、学生運動も下火になり、オイルショックの煽りを受けながらも経済的に社会は発展していく。
一方で、ひとりひとりの個人は、社会への閉塞感と気だるさを抱えている。」

その時代を体験していないので実際にはわからないのですが、そんな時代だったのではないかなと、僕は解釈をしています。

さて、映画のストーリーについて。

水呑み百姓になるよりは・・・と、やくざ渡世の世界に憧れ、故郷を飛び出した源太、信太、黙太郎。3人は渡世で名を売ろうと父を斬り、惚れた女を売りとばすなど、およそ人の道から外れた旅を続け、最後にみじめな死を迎える者も…。3人の若者の無鉄砲な生き方と3人のそれぞれの青春を描いた股旅もの。市川崑監督の意欲あふれる青春時代劇。詩人谷川俊太郎が市川と共同脚本を手掛けている。 (C)1973 活動屋/ATG

これで、だいたい説明されている感じがします。
『木枯らし紋次郎』がとてもヒューマンな物語なのに対して、『股旅』は物語性とかエンターテイメント性みたいなものは、すべて切り捨てています。

一方で、驚くくらいに映像が綺麗で、まさにこれが「映像美」と思うのだけれど、どうかなあ。
自信を持っておすすめはできないのだけれど、機会があれば見ていただけると良いなと思います。

シミュラークルあるいはシュミラークル。ポスト・トゥルース的、何ものでもない何か。