現代中国を描く大河ドラマ 小説『兄弟』/映画『山河ノスタルジア』

2017年も残りわずか数時間となった。 今年は近年稀に見る激動の年であった。 アメリカではポピュリズム的な現象を背景にトランプ政権が発足、フランスではマクロンに敗れたがマリーヌ・ル・ペン率いる国民戦線が躍進。 ヨーロッパでは、イギリスのメイ首相がEUに離脱を通知、スペインのカタルーニャ地区は独立を宣言した。 中東ではイスラム国は事実上の崩壊。 しかし、アメリカのトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したことから多数の抗議活動が起きている。 アジアでは、フィリピンのドゥテルテ大統領が麻薬撲滅キャンペーンを実施し超法規的殺人が行使され、マレーシア・クアラルンプール空港では北朝鮮の金正日総書記の長男である金正男が暗殺され、ミャンマーはかつての民主化運動の旗手アウンサンスーチーによる新政権のもとロヒンギャは混乱に陥っている。 そして、日本では飛翔体が定期的に飛び越えている。 他方、経済面は数値の上ではバブルとも思える好調であった。 世界的に各国の経済は軒並み好調、日経平均もかつて1992年のバブル崩壊前の水準に上昇。 また、仮想通貨の価格は10倍にも100倍にも高騰した。 そのよう...

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映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』 を観る。

物語を語ることの意味を真摯に語り切った物語に、日本文化の死生観と情緒を再発見させる映像の美しさに、音楽に、何度も泣かされてしまった。 こんなにも夢中になれる映画に出会えるとは。 主人公のクボは、三味線を鳴らして折り紙を操ることのできる不思議な力を持った隻眼の少年だ。 彼は三味線の演奏と動く折り紙の人形で「月の帝に立ち向かったサムライの物語」を語って村の人々の人気を博していた。 しかしクボはいつも結末まで語らずに物語を中断して帰ってしまう。 実は、クボ自身もその物語の結末を知らないのだ。 それは、彼と二人暮らしの母親からいつも聴かされていた、彼の一族にまつわる物語だった。 月の帝はクボの祖父でその娘であるクボの母親とクボを守るために戦ったサムライがクボの父親だった。 クボの片目がないのは生まれてすぐに祖父に奪われてしまったからだという。 クボは母親から物語を聴かされるのが大好きだったが、母親は夫を失ったショックからかその結末が記憶から失われていて最後まで語ることができなかった。 クボの物語が大きく動き出すのは村の祭りの晩、日が沈んでから外に出てはいけないという母親との約束を破ってしまった...

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読書好き必見!インドア派におすすめする10冊の本

読書週間は過ぎてしまったが、読書好きにおすすめする10冊の本を紹介。 紅葉の季節でもあり、クリスマスの季節が近づいている現在、街や公園には人が溢れています。 しかし、充実した生活とはなんだろうか。 この秋冬インドア派におすすめしたい10冊の本を紹介。 『トリストラム・シャンディ』(ロレンス・スターン/岩波文庫) 語り手が自分の一代記を語ると言いながら出生にすら辿り着かずに終わる小説。本文の九割以上が関係ない話をしている。いきなり自作解説を始めたり、真っ黒なページやまだら模様のページが次々挟まれたり、粗筋を線で表現したり。 『エンジン・サマー』(ジョン・クロウリー/扶桑社海外文庫) 文明崩壊後の地球を叙情的かつ象徴的な文体で描くボーイミーツガール。この作品そのものが物語を語る物語であり、メタフィクションという形式でしか表せない恐怖と悲しみと切なさがある。物語と語り手は絶望的に隔てられている。 『ロクス・ソルス』(レーモン・ルーセル/平凡社ライブラリー) マッドサイエンティストが自分の発明品を見せびらかすだけの幸福な小説。手品をやるそばから種明かししていくような話なのに、それがひたすら愉し...

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映画『ローガン・ラッキー』を観る。

このお話は欠けたところから始まっている。 主人公のローガン兄弟の兄ジミー(チャニング・テイタム)は工事現場で働いていたが、膝のケガを理由に解雇されてしまう。 一人娘も別れた妻の新しい家族と暮らしている。 彼の弟クライド(アダム・ドライバー)戦地で片腕を失い、今はバーテンダーをやっている。 ローガン一家は不運の家系だというのがクライドの口癖になっている。 仕事をクビになり、娘のコンテストの日にちも間違えてしまう、悪いこと続きのジミー。 弟の店で飲んでいるといけ好かない経営者と喧嘩になる。 騒ぎの中、彼は弟に「カリフラワー」と告げる。これは強盗計画決行の合言葉だった。 ジミーの家には彼が考えた強盗計画10か条が貼ってある。 弟は言う、もうこんなことからは足を洗いたい、でも兄が苦手な知恵を絞ってこの計画を立てたのはわかるし、朝食を作ってくれた、自分好みの焼き加減にしてくれた、だから話は聞くよ、と。ここの場面が好きだ(そしてジミーの焼いたベーコンが美味しそうだ)。優しくて、なんというか「キュート」な、この映画の性格が現れているようだ。 ここから、今は服役中の爆破のプロであるジョー(ダニエル・ク...

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映画『GODZILLA 怪獣惑星』を観る。

映画『GODZILLA 怪獣惑星』を観る。 「人間ドラマ」偏重の作劇も、ハルオのキャラクターも、アニメ特有の演技も、予想していたほど気にはならなかった。 登場人物のバックボーンを省略する語り口は『シン・ゴジラ』以降の物語だと感じる。 とはいえ、地球に降り立つまで数十分は、狭い場所で動きも少なく、間延びした印象は否めない。 3部作の1作目というよりは、2時間映画の冒頭を89分に引き伸ばした感じだ。 「怪獣」が登場するのは後半、ゴジラに至っては終盤も終盤でようやく姿を見られる。 だが、どういうわけか、待ちに待ったという気がしない。 気が付いたらそこにいた、という感じで、背景の中の異物になっていない。 これがアニメでゴジラをやるということなのかなと思う。 現代SFアニメのフォーマットに、ゴジラという記号(巨大で、熱線を放つ人類の敵)を乗っけた物語を語りたいのであって、特撮を再現することは考慮に入っていないのか。 じゃあ特撮っぽいとはどういうことなのかと考えた時にまず思いついたのは、現実にあるわけがない(≒作り物)という異物感と、同時にそれが本物に見えてしまう現実感を行ったり来たりする、虚実の...

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映画『全員死刑』を観る。

すっげえの観た。『全員死刑』ここまで面白いとは。『悪魔のいけにえ』を思い出させる禍々しさと笑い。どう考えても笑う場面じゃないところで恐ろしくくだらないギャグをかます。凶悪なまでにシームレスで未知の感情が喚起される。センスの塊だよ。 なんていうか戸梶圭太の小説の「激安」って概念を思い出すな。人命も思考も行動も、人生として想像できる範囲にあるもの何もかもが安い。 被害者宅の庭の手入れされてない感じとかモーターボートとかリアル過ぎるんだよなあ…。皆だいたいワゴン車だしコンビニはヤマザキショップだし。地元で撮ったのかと思うくらい。 「洗練されてない」ってことをセンス良く撮るのがヤバい。そもそも題材が題材だし。ひたすら安くて愚かで酷いのに、しかしこれは純然たるエンタテインメントなのだ。それもコメディである。 ハイローファン的には一ノ瀬ワタルが「鬼邪高の関ちゃん」としか形容できない役で出演しているのもポイント高い。「良くない就職先」潰せなかったんだね…。...

映画『予兆 散歩する侵略者 劇場版』を観る。

映画『予兆』を観てきた。 『散歩する侵略者』の裏面であり、侵略の物語は当然こういう顔も持っているということを思い出させられた。 前作のオフビートな愉快さは鳴りを潜め、人間の弱さと、得体が知れないことを画面に映し出す表現に比重が置かれている。 体温を奪われる、あの世が侵入してきたような映像に目が離せない。 終末の、光りも熱も遮る曇り空を見て、やはり黒沢清の怪獣映画を観たいと思う。 それはそうと宇宙人は天野くん達のチームだけじゃなかったんだな。当たり前か。 歩くだけで人がバタバタ倒れていくのが東出真大のオーラに圧倒されているみたいで面白かった(『散歩する侵略者』の怪しすぎる神父とは全く関係なかった)前作の「概念を奪う」行為は、加瀬真治という人間の人格や鳴海との関係の再構築をもたらすものとして、ある意味肯定的にも描かれていた。 今作でのそれは、奪うことの恐ろしさと、どうしようもなく弱い人間の悲しさを浮き上がらせるものになっていた。 「愛の概念」は今作でも重要な存在だが、こちらも人間の弱さと残酷さの源、という性格も帯びている。 概念の扱いには必ずしも納得のいくものばかりではないのだけれど、「死...

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ドラマ『この声をきみに』最終回

ドラマ『この声をきみに』最終回 地震・衆院選・SP番組で計3回も飛ぶという不運に見舞われながらも最後まで丁寧に作られていた秀作。 大森美香の脚本が決定的な仕事をしていたと思う。 大森さんはNHKで書くようになってから全くというほど外さない。今回もNHKでないと描けないような繊細な話。 内容を要約すると、自らの主義に固執するあまり家族から見捨てられた数学者が職場で行けと言われた自己啓発セミナーの先生と出会い人生を見つめ直す話しで、凝り性の人間が綺麗なセミナーの先生に弱った心を癒やされ丸くなっていく話だったらヤバいなと思っていたのだが、勿論そんな浅い話ではなく。 麻生久美子演じる自己啓発セミナーの先生は朗読教室の先生もやっていて、ここから朗読というコアなテーマが導かれる。 主人公の数学者は言葉や声を媒介にゆっくりとつながりを模索していく一方、実は先生の側がそれ以上の問題を抱えていることが発覚する。 シンプルだけどこの逆転が効いている。 人に何かを教える側の人間がその事に確信が持てなくなる苦しさ。 特に今回は“朗読”を着想に、目に見えない言葉や声で人と人を繋いでいくという話だったので、余計に...

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『恋妻家宮本』を観る。

『恋妻家宮本』を観る。 ずっと映画を撮りたいと公言していた遊川さんの作品だったから期待していたんだけど映画館には観に行けなかったのでDVDで鑑賞。 良かった。てっきりオリジナル脚本だと思っていたら原作は重松清の「ファミレス」という作品で、ただ調べてみると原作と設定が変わっている部分もある。 遊川さんの映画に対する真摯さが伝わってくる王道の展開や場面が満載で、そのオーソドックスなつくりの中で、脚本家としての人間を描く力が存分に発揮されていた。 プロットよりも台詞に重きを置いた本作はとてもテレビドラマ的なんだけど、それが映画に置き換えられると証明した遊川映画の誕生だと思う 遊川さんといったらバックグラウンドありきのキャラ設定と建前抜きの鋭い本音がひとつの特徴のだけど、本作は子の手が離れ再び二人での生活がスタートしたありきたりなアラフィフ夫婦の話。 夫婦関係の再確認を起点に、周囲の人々の問題を絡めつつ最後には冒頭と同じファミレスのシーンに戻っていく。 たった2時間のこの一周で27年間の夫婦生活の意味やパートナーの存在意義を過不足なく物語として成立させちゃうんだからすごい。 ひとつ具体的な内容...

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『ブレードランナー2049』を観る。

『ブレードランナー2049』を観る。 立派な続編だと思うが「ブレードランナー」ではないというか、前作にそれほど強い思い入れは無いので、これはこれで素晴らしかったのだが、やっぱり上映時間は長く、もうちょっとやりようがあったのではと思ってしまう。 主演のライアン・ゴズリングは『ドライヴ』の次くらいに好きなゴズリングだった。 『ブレードランナー』と『ブレードランナー2049』の決定的な違いは湿度だ。 雨に煙る猥雑な電脳都市に対して、灰が降る曇天の荒れ地。 『2049』では、水分も生命も感じさせない白茶けた大地の美しさに比べて、雨や波といった水気の多いシーンが奇妙に嘘臭かった。 むしろ、『ブレードランナー2049』は殺菌乾燥した画づくりが指向されているのだろう。 だから前作を模した雨の街の情景が作り物めいて見える一方で、砂と灰の積もる人気も水気も無い空間がたまらなく美しかった。 だから、この作品には「雨の中の涙のように」という言葉はなく、代わりにあの場所でのラストシーンがある。 とはいえ、『2049』はディック的に良いところもあって、ラストの自分がニセモノでしかないと知りつつもデッカードを娘の...

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