忙しくてなかなか進まなかった松浦理英子『最愛の子ども』読み終わり。
傑作中の傑作で、これまでこんなに愛おしいと思いながら読んだ小説があっただろうかと思うほど。
<わたしたち>という一人称複数で<わたしたちファミリー>を追いかけるという構造には一見無理があるのだが、徹底した構造順守の姿勢と読み手の期待や愛のようなものが<わたしたち>の妄想部分の違和感を消し去る。
深層には松浦さんに一貫するテーマを確認できるが、少女という設定によりその一歩手前・分化される間際が青春小説として読めるあたりが個人的には良かった。
また、これは“距離”が一つの重要なアクセントになっている。
事実や妄想で伸び縮みする<わたしたち>と<わたしたちファミリー>の距離感、<わたしたち>という総称を持ちながらそこから自在に分裂する彼女たちなど、特定の場所に依拠しない/できない浮遊感が対象との距離を際立たせる。
真汐・日夏・空穂という捏造された家族(<わたしたちファミリー>)という実体こそあるものの未だ世界に受け入れがたいものの総称を虚実を交えて時間をかけて観察し実体を持つものへ重ねたり広げたりを繰り返しながら解釈を取っていくという技法が、現実でも通用して欲しいと思った。
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