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TVドラマ評 2017年4月クール作品の紹介

物語と想像力がもたらす力というものを自らの手で証明します
TVドラマ評 2017年4月クール作品の紹介 Posted on 2017年4月15日Leave a comment
物語と想像力がもたらす力というものを自らの手で証明します

4月クールのドラマが始まりだしました。特に初回は出来るだけ全て見ようと忙しくしてるのですが、今回は非常にバリエーションに富んだ良作揃いです。
そんな中でネットではこういった記事が散見しますね。
http://www.asagei.com/excerpt/79263
http://biz-journal.jp/2017/04/post_18710.html

ライターも書き手だから、ある程度過激な事を求められているという立場を踏まえての記事なのでしょう。
ただ最も問題なのは、この記事だけを読んで「今回のドラマも総じてつまらないんだね」と見てもない人間が思ってしまう事です。いくらネットの三文記事とはいえ、その影響力や捉えられ方を想像して書かれない記事は良くないなと思ったりします。

「犯罪症候群」「クライシス」

両者とも刑事モノとミステリーという割と万人受けする形式です。
前者はwowowと東海テレビというドラマフリークが否が応でも期待を寄せるタッグですし、後者は公安という使い尽くされたネタを、初回だけで2つ事件を用意しキレよく処理していく中でチーム内キャラや立ち位置をスマートに説明する技量は目を引きます。最後に主人公の過去のトラウマ描写なんかも効果的に挿入し、今後の物語の推進力となっていたと思います。

「リバース」

TBSお得意の湊かなえミステリーをいつもの枠でいつものスタッフでというところ。これも安定してみれると思います。タイトルがリバースだけあって、時系列の行ったり来たりが見どころになるのですが、その見せ方としては少し退屈な部分もありましたが、キャストそして湊かなえには珍しい異性交流の少ない物語にも期待です。

「100万円の女たち」

こちらはNETFLIXとテレ東の共同制作。
RADの野田洋次郎主演で、彼と謎の女5人の共同生活が描かれます。女の一人には永遠の推しであるところの松井玲奈。深夜だしもっと尖ってもいいところを絶妙な抑止力を働かせて、今のところ全てが宙ぶらりんになっている緊迫感がいいですね。どっちに転ぶか分からないですが、当たる可能性もなきにしもあらず。

「母になる」

水橋文美江脚本の不思議な力に魅せられ去年のベスト1ドラマを「早子先生…」にしたけど、その水橋脚本の新作。
冒頭『シンギュラリティにおける次世代の家族の在り方について君はどう思いますか』という架空の本が後に夫婦となり事件に巻き込まれていく2人の出会いのきっかけとして出てきた時には、「シンギュラリティ」・「家族」・「不気味なもの」、おいおいこれはもはや『観光客の哲学』ではないかと大いに驚かされました。

「早子先生…」でも多用されたモノローグ形式で物語を進めながら、多くの人が言及している映画「チェンジリング」的な展開と、上記の記事で演技が酷評されている突如顕れた子どもの不穏さ、村上春樹が「騎士団長殺し」で描いた「父になる」と近接したテーマなど、今誕生したことに意味がある非常に注目作です。アサ芸にこういうこと期待してもダメだけど、作り手の意図というのは考えるべき。

「人は見た目が100パーセント」

やれ中身がないだとかそもそも桐谷美玲が不細工じゃないからリアリティがないだとか、それくらいの浅すぎる意見しか世の中には出回らないんですね。参照した記事の酷評具合がえげつないです。
このドラマ、まだ初回だけですが僕は物凄く良くてきていたと思います。
僕は1月クールの「タラレバ娘」がほんとダメでした。
それには明確な理由があって、彼女たちが会って話す話題の大半が“恋愛”なのです。職業も家族も出てきますが、結局すべて恋愛の悩みに絡めとられてしまう。

別に”恋愛“がダメと言っている訳では無いです。
”恋愛“が非常に個人的な感覚にのみ因っているということに無自覚になってしまう事がマズいのです。
もちろんこのような女性3人が集まってうだうだしゃべるといった女子会ドラマはこれまでにもありました。
ただこれまではもう少し年齢が上に設定され、彼女たちの浮き沈みのある人生や経験が投影された上でのものったんですね。そこに関して「タラレバ」は、それこそ恋愛によってしか得れていない中途半端な感覚のみをあてにして何度もループを繰り返しているようにしか映らなかったのです。これはまさにイメージやノリを至上価値とした「ポスト真実」的な世界観であり、非常に危険な兆候だと思いました。

話しが逸れましたが、「人は見た目が…」のどこが良かったか。フォーマットとしてはここ数年のトレンドの“タグ化画面”構造を上手く利用し、冒頭の台詞で、この世は根拠なんかどうでも良くイメージという典型的な「ポスト真実」世界だと言及します。この時点で「タラレバ」のメタ視点に立てているのです。
そこを踏まえて彼女たちがこの世界にどう立ち向かっていくのか。妥協するのではなく、何か根拠を求め試行錯誤(研究)しながら生き抜く姿が描かれていくのでしょう。
初回ではファッションがフィーチャーされます。ファッションとは恐ろしいもので、完全に感覚・センスの世界です。センスのある人がイメージや感覚で優位に立てるノリ至上的な世界を今の世界に見立て、それをリケジョという設定を踏襲しながら研究していく。この地道な試みこそが実はバランスを崩しつつある現世にも通用する有効な手段であることを3人が示してくれればと切に願っていますし、その可能性を十分秘めていると思います。

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宝田 とまり
宝田 とまり
物語と想像力がもたらす力というものを自らの手で証明します

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