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操作された記憶、奪われた記憶、欠落した記憶。
そんな世界の不確かさに怯えるのでも憤るのでもなく、ただ、ぼんやりと(ニセモノかもしれない)「現実」を受け入れる「ぼく」(あるいは「君」)。
この、離人症的というか、感覚の麻痺した語りが、何よりも饒舌に、そして切実に、語られていない「これまでのあらすじ」を訴えかける。

この小説が描く世界は断片的だ。
ナノマシンによってバラバラにされて組み直されたヒトやモノや世界。
そして小説の語りも断片的になり、時には互いに矛盾した記述も出てくる。
形の合わないパズルのピースである。

しかしながらピースは不定形の生もので出来ているから、形を変えてすっぽり収まってしまう。
無理やり当てはめたものだから、色んなところに不具合が出てくる。
現実のような何か。記憶のような何か。小説のような何か。
ニセモノにしかなりえないこと。それは哀しい。けれど美しい(ホンモノよりも。だってそれこそがニセモノなんだから)

この作品は怪獣小説でもある。
怪獣が呼び起こすノスタルジー(今はもうない小さな映画館で観た怪獣映画の記憶)。
おそらく、語り手にとっては本当は存在しない記憶、ホンモノの記憶が歪められた姿。まさに夢だ。
そして怪獣も、夢の中の存在だ。メタ怪獣小説。

科学者になりたかった。科学者になって怪獣を創りたかったのだ。―どんなものでも創れるシステム。なんでも売っているデパート。人に夢を見せてくれる機械。大人になったぼくは「会社」の技術開発部に所属して、新しい生き物を作る研究をしていた。だが、意に反した方向で進められることになった研究の続行を拒否し、会社を去ることになってしまった。そのせいであれに関する記憶のすべては、会社によって破壊されることに…。新感覚サイバー・ワンダー・ワールド。
(BOOK」データベースより)

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