Urban Liberal Arts & Post-Truth Stories for the People

読書ノート

『不安定な時間』ミシェル・ジュリ

「われわれの時代に、人類はついに内的宇宙を征服することができたんだ」「だが、部屋には悪魔がはいっていて、あんたがたはドアに鍵をかけなくちゃならないのだ」 ディックの『ユービック』を連想する。主観的な時間旅行あるいは死後の世界。人格と場面が唐突に目まぐるしく変転し、変奏を加えて何度も何度も繰り返される。この反復がどういうわけか愉しくてしかたない。どこにもたどり着かずに跳躍し続けてくれてもいいくらい。SF文学史にボリス・ヴィアンやレーモン・クノーの名前が出てくるあたりがとてもフランス。

『神曲 地獄篇』ダンテ

建築物としての全体も神学も歴史的背景もわからないなりに、パオロとフランチェスカの恋愛、ウゴリーノ伯の餓死、農耕詩的な比喩、といった細部の造型を美しいと思う。と同時に作者の自我の強さというのか同人誌的というのか、自らを偉大な叙事詩作者として数えたり、オウィディウスの『変身譚』にも勝ると自負したり、嫌いな相手を(存命であっても!)地獄に落としたり、大好きなウェルギリウスを登場させてイチャイチャしたり、作品の緻密さや幻視の凄まじさと合わせて、文学者の業に感動する。解説『ダンテは良心的な詩人か』がためになった。

『アウトライナー実践入門 ~「書く・考える・生活する」創造的アウトライン・プロセッシングの技術~』Tak.

死ぬほど苦手だった、文章を書くということの仕組みを初めて体感できた気がする。今まで目にしたどんな文章技術の本よりも実践的でわかりやすい。

『挑戦者たち』法月 綸太郎

ジョジョやノベルゲーやTwitterのネタからボルヘスや稲垣足穂、カフカにベケットにレムにナボコフにカルヴィーノまでパロった本格ミステリ版「文体練習」。元ネタの多彩さが楽しい。特に『幻獣辞典』が笑えた。「〈読者への挑戦〉とは書物の中にひそむ妖魔で、(F・R・ストックトンの疑わしい報告によれば)女と虎が半分ずつ混じり合った姿をしている」って何だ。

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