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群像新人賞-芥川賞候補作、北条裕子『美しい顔』問題によせて

北条裕子『美しい顔』の無断引用問題は個人的に非常に残念です。
僕は『美しい顔』を読んで、非常に優れた小説だと思いました。
群像新人賞の選評でも賞賛され、掲載翌月の新聞の書評でも好意的に取り上げられた記事も多くみました。
そして、159回の芥川賞の候補にもノミネートされている。

読み手としては、無断引用なんて問題は当たり前にクリアされている前提で受け取るので、もはや対処の仕様がない。
一つの作品として世に出されたものが素晴らしければ積極的に賞賛したいし、本作に救われたと実感した人もいたはず。そんな人たちの期待と感謝を裏切ることとなったのは事実。

と、一元的に片付けられない部分も確かにあると思う。
本作のテーマが震災を扱っていることや客観的に作者の容姿が整っていることや新人賞の在り方など。

ただ、一つ言えるのは、本作は未だ単行本化されておらず、事態が発覚した際は既に次の号の群像が発売されており本作が掲載されている群像は書店には残っていなかった。
つまり、本作『美しい顔』をきちんと読んでいる人間は、数多の批判がなされるなかのほんの一握りしかいないという事。

純文学雑誌(群像)の発行部数を考えると、これは紛れもない事実。

何が言いたいのかというと、僕はバイアスがかかる前の『美しい顔』を読み純粋に心を打たれる経験をできたということ。残念ながらこの小説はもう純粋ではなくなってしまった。ただ、僕はまだ当たり前に純粋と信じられている時に読み、
まだ若い主人公のやり場のない憤怒が堰を切ったように溢れだす瞬間に心を打たれた。それを力強く表現した小説の世界に圧倒された。そんな貴重な読書体験ができたと思う。

とはいえ、乗代雄介『生き方の問題』が本作の載った号に同載されたせいで芥川賞候補にならなかったというのが純文学界的な一番の問題な気もする。

今回の芥川賞は暗い純文学界隈の話題を吹き飛ばすためにも松尾スズキ受賞が一番だろうけど、現実的ではない。町屋良平の『しき』も個人的には大好きだけど、受賞のボーダーには満たない気がする。古谷田は三島賞取ったばっかりだしさすがに難しそう。となると、満を持しての高橋弘希になるのだろうか。

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