『イップ・マン外伝 マスターZ』

 ブルース・リーの師としても知られる葉問(イップ・マン)の生涯をモデルしたカンフーアクション『イップ・マン』シリーズのスピンオフ。シリーズ3作目の『イップ・マン 継承』でドニー・イェン演じるイップ・マンと激闘を繰り広げた詠春拳の達人チョン・ティンチ(マックス・チャン)が今作では主人公になる。

 『イップ・マン 序章』から今作までストーリーは毎回一緒だ。家族や市井の人達とささやかながら幸せに暮らす主人公が、トラブルに巻き込まれ、生活を失う。その背後には街を牛耳る外国人(『序章』では旧日本軍、『継承』ではアメリカ人、『葉問』『マスターZ』ではイギリス人)と、彼らの言いなりになっている地元の警察やチンピラがいる。映画の前半でチンピラとの大立ち回りがあり、主人公と家族が絆を深める描写があり、やがて誰かが死ぬ。ついに立ち上がった主人公が詠春拳の技で悪い外国人に一騎打ちを挑む。主人公に感化され、地元の警察も反旗を翻す。だいたいこんな流れである。

 このシリーズの魅力は何と言っても、主役を演じるドニー・イェン、今作ではマックス・チャンの、超絶技巧の詠春拳と、手を変え品を変え物量を変えて繰り出されるアクションシーンの数々である。
繁華街の看板の上を飛び回りながら繰り広げられる1対多の立ち回り。上体が全くぶれずに高速で打ち出されるショートパンチ。酒のグラスの譲り合いから流れるように移行する組み手。志を取り戻したティンチの名乗り。ドラマがベタというよりもアクションがドラマでありカンフーで人物を描いている。
やられたら即倍にして返す荒っぽさといい、人格者のイップ・マンの端正な演技とはまた異なる、ある種ダークヒーロー的なティンチのキャラクターがアクションに反映されている。

 主人公が現代に生きる詠春拳の達人という設定なので、一介の刑事が突如アクロバティックな蹴り技を披露するSPLシリーズのようなアクションシーンとシリアスなドラマの乖離が起こらないのもいい(SPL2『ドラゴン×マッハ!』は大傑作だけど)。

 「友情出演」トニー・ジャー演じる謎の黒づくめの男(本当に謎だった)も見どころ。

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