映画『ラ・ラ・ランド』 – 常に“何か”の探究者であった2人の永遠 –

常に“何か”の探究者であった2人の永遠 「ラ・ラ・ランド」の感想です。 本作は本国アメリカで大絶賛を受けアカデミー賞の前哨戦であるゴールデングローブ賞を総なめにしたことから、日本でも公開前から話題となっていました。今回この映画にこれほどまで多くの関心が寄せられた要因として、監督であるデイミアン・チャゼルの存在は欠かせません。 彼は2014年に29歳の若さで撮った「セッション」で一躍有名になりました。自身の経験を元に、音楽学校の教官と生徒の壮絶なる師弟関係を描いたこの作品に衝撃を受けた人も多かったでしょう。過剰な描写ゆえに音楽関係者やジャズ愛好家からの批判も多く、賛否がはっきりと分かれたこの映画は一体どこが優れていてどこに人々の心を動かす要素があったのか。 その1つが監督であるチャゼルの“場を支配する力業”だったと思います。 映画では主人公であるドラマーが教官から容赦ないまでの特訓を科されます。手が血で真っ赤に染まるまでスティックを握らせたり少しテンポが狂っただけで平然と殴打されたりする描写が繰り返され、初めはその荒さや痛々しさに目を背けたくなるのですが、追い込まれていく主人公が感情や尊...

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映画『ラ・ラ・ランド』/『お嬢さん』を観る。

乗り換え時間2分で「お嬢さん」と「ラ・ラ・ランド」観た。 どちらも物凄く良くできた傑作だと思う。 ここまで間を空けず立て続けだとしっかり見れないと思ってたけど、まず4時間ちゃんと緊張感を持って見れたことが自信になった。 『ラ・ラ・ランド』 まず、チャゼルはハリウッドの宝だね。 彼の才能なしにはこの映画は語れない。 「セッション」の時に一番思った空間を支配することで、内容の善し悪しにかかわらず観るものを釘付けにするという力は今回も健在。間延びとか無駄を感じさせず緻密に観るものを誘導してくれる。 僕はミュージカルをそれほどたくさん見てる訳ではないけど、本作の冒頭のダンスシーンから始まって、ありふれた出逢い・ありふれた再会・ありふれた惹かれ合い・ありふれたすれちがい・ありふれた別れ・ありふれた成功・遅すぎた再々会と、総てが既存のフォーマットの焼き直しになってる。 「セッション」でもあったが、このチャゼルの徹底ぶりやしつこさがじわじわと観る者を気持ちよくさせていきラストでその全てが解放されるというのは映画本来の魅力の1つだと思う。だからこそ僕は最後のニセのセットで楽しげに踊る”かも...

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又吉直樹『劇場』を読む。

又吉直樹『劇場』を読み終える。 『火花』を読んだときに、芸人を主人公にした職業小説ゆえのリアリティが又吉にしか書けないものだと思ったが、同時に次は大変だろうなとも思った。 しかし、そんなことは全くなかった。 劇団を主催する永田とその恋人沙希との話。 物語は永田の「僕」の一人称で語られる。 この永田が重症。小劇場や芸人・バンドマンに見られるような夢追い人属性に加え、過剰なまでに他者を拒絶する。その配分されない他者の全てを沙希が受け入れる。『火花』にもあったダメ男と健気な恋人というのは又吉の得意な設定。 ありふれてはいるものの個々の話の真実味に胸が詰まる思いがした。 不器用な永田を擁護しつつ、健気な沙希に安心させられる。 もちろんこのような関係が続くことはなく、鈍感な永田が関係を維持するための沙希の努力にハッとする場面など、沙希の思いの残滓に必死に火をつけようとする小さく大きな姿に胸が千切れそうだった。 ただ、それだけ。ただそれだけなんだけど、永田のダメ男ぶりや沙希の可愛らしさ、仕事関係の青山という人物とのメールのやり取りなど、小説として引き込まれる部分も多かった。 途中から、回想のように...

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“小さな旅”のはじまり、「ぼくらが旅に出る理由」。

これは何度も懲りず無謀な旅に出る前の“小さな旅”のはじまりについてのことだ。  先日突如として、小沢健二の19年ぶりとなるニューシングルが発売された。 発売を機にテレビなどメディアへの出演も果たし、近年表舞台での活動を控えていた小沢健二のカムバックに歓喜するファンの声がネットを中心に話題となった。 言わずもがな、僕もその一人である。 彼の代表曲の一つに「ぼくらが旅に出る理由」という歌がある。のちに数多くのアーティストにカバーされテレビCMにも使用されるなど、発売から20年以上が経つ現在もその人気は絶えない。 僕がこの曲に深い思い入れを抱くきっかけとなった出来事がある。それは2010年2月にとあるラジオ番組が行った「小沢健二とその時代」という放送だった。 当時まだ大学生だった僕は就職活動も終わり4月から新社会人として働くことが決まっており、残りわずかな大学生活でやり残したことはすべてやってしまわねばと焦燥感に駆られていた。内定していた会社は希望していた業界や職種とはかけ離れているにも関わらず、大学時代のようにいくらでも自分の好きなことに時間や労力を割ける生活が望めないことは自明だった。毎...

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映画「雨の日は会えない、晴れ た日は君を想う」を観る。

「雨の日は会えない、晴れ た日は君を想う」観てきた。 原題がDemolitionということで、劇中の激しい破壊シーン含め”壊れる”という変化が執拗に描かれる。冒頭のショッキングなシーンやそこで話されてる冷蔵庫、実は物語の始まり以前に壊れていた夫婦関係など。 主人公のデイヴィスも妻の死によって感情が壊れてしまったというより、どこか元から人間として壊れていたように映る。 壊れていたもの・壊れているもの・壊したものに囲まれながらフラッシュバックする記憶と破壊的衝動、再生の兆しとなる母子との関係を通じて進んでいく物語には無駄がなかった。 物語のラストでは最も長く壊れたままになっていたものが動き出す。 絶縁寸前だった義父に頼んでまで再生を試みたものがあれだったことに特に深い意味はないのかもしれないが、再生によって確かに動き出した時間は可視化され、それは単に自分だけのためではないように映った。 その瞬間は主人公だけの問題にとどまらず、失った人間が再び立ち上がる普遍的なシーンを見ているようだった。 一番最後の破壊を客観的見せるシーンまで(破壊からの卒業)素晴らしい。 ジャンマ...

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映画「彼らが本気で編むときは、」を見る。

「彼らが本気で編むときは、」見た。 荻上直子の新作でこのテーマはと思ってたんだけど、やっぱり良かった。 これまでの荻上作品は、広義のマイノリティがマイノリティを自覚して連帯することで居場所をつくり、その格式高さのようなもでアイデンティティを保つというような印象だった。 分かる人にだけ分かれば良いといったマイノリティ側の諦念やシャットダウンで成り立つユートピア的世界の美しさが基本にあったと思う。 ただ今回はマイノリティを扱いつつも、社会との接触や分かりあえなさにきちんと向き合っている姿が感動を呼んでいたと思う。 トランスジェンダーの話を大人の世界中心にだけ描くのではなく子供の視点含め幅広い年齢の人を使いながら描くことで、当人にとっては長く付き合っていかなければならない問題なんだということも伝わった。 ブローチや毛糸の使い方、布団の敷き方の変化など小道具の細かなこだわりなんかも良かった。 トランスジェンダーのという難役を演じた生田斗真の演技が素晴らしい。 始めこそ違和感はあったものの、次第に女性に見えてくるところもあって、最後の夜明けのベランダのシーンは一周回って男らしさみたいなものも滲み...

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村上春樹『職業としての小説家』/『騎士団長殺し』を読む。

村上春樹の『職業としての小説家』を読み終わった。驚いたのは数年前に出たばかりの比較的新しい本の内容なのに既知に溢れていたこと。monkeyで書いていたのがもう少し前ということもあるのだろうが、村上春樹を語る上で多くの人間がここから引用してるということが良く分かった。 僕の印象では、彼は小説の創作や個人の話をそれほど語ってこなかった。それは彼の特異な部分だし、それを望んでいるファンもいるのだろう。だけど、僕はこれはアンフェアだと思う。海外の知らないところで書いて、具体的な声明もないまま新刊が出て、本当に読まれてるのか分からないが売れている。 よく言えば読者に委ねると表現できるが、僕は彼のテーマとは別の態度としてのデタッチメントに付き合いきれないと思っていた面が大きいということが分かった。人間臭くなるけど、もっと苦労したとか性描写ってくせになるよねとかそういったありふれた声と共に作品が届いて欲しかったのかもしれない。 間接的ではあるものの今回この『職業としての小説家』を読んで村上春樹の人間的な部分に触れることができ、それが新刊をおおいに面白く読んでいる結果につながっているようで、嬉しいし楽...

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松浦理英子『最愛の子ども』を読む

忙しくてなかなか進まなかった松浦理英子『最愛の子ども』読み終わり。 傑作中の傑作で、これまでこんなに愛おしいと思いながら読んだ小説があっただろうかと思うほど。 <わたしたち>という一人称複数で<わたしたちファミリー>を追いかけるという構造には一見無理があるのだが、徹底した構造順守の姿勢と読み手の期待や愛のようなものが<わたしたち>の妄想部分の違和感を消し去る。 深層には松浦さんに一貫するテーマを確認できるが、少女という設定によりその一歩手前・分化される間際が青春小説として読めるあたりが個人的には良かった。 また、これは“距離”が一つの重要なアクセントになっている。 事実や妄想で伸び縮みする<わたしたち>と<わたしたちファミリー>の距離感、<わたしたち>という総称を持ちながらそこから自在に分裂する彼女たちなど、特定の場所に依拠しない/できない浮遊感が対象との距離を際立たせる。 真汐・日夏・空穂という捏造された家族(<わたしたちファミリー>)という実体こそあるものの未だ世界に受け入れがたいものの総称を虚実を交えて時間をかけて観察し実体を持つものへ重...

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「テレビドラマはヒロインを殺したか?——–2016年の連ドラをめぐって」

遅くなりましたが2016年のテレビドラマベスト10を発表します。 1位 「早子先生、結婚するって本当ですか?」 2位 「ふれなばおちん」 3位 「ゆとりですがなにか」 4位 「逃げるは恥だが役に立つ」 5位 「ちかえもん」 6位 「徳山大五郎を誰が殺したか?」 7位 「プリンセスメゾン」 8位 「フラジャイル」 9位 「奇跡の人」 10位 「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」 ※大河・朝ドラ・WOWOW・ネット系有料ドラマを除く 全体の印象としては、大作ぞろいの邦画の陰で盛り上がりに欠ける作品が多かったように感じます。それでも「逃げ恥」や「真田丸」などの話題になった作品もあり、実験段階ではありますが視聴率にも録画予約の数字が組み込まれたりと、現代のライフスタイルに合わせた評価のされ方も徐々に浸透しているのかなと実感しました。 個々の作品にざっと触れた後、総評をします。 「早子先生、結婚するって本当ですか?」 昨今乱立している大文字の「婚活ドラマ」とは一線を画し、今までに見たことのない斬新なアプローチから婚活を描いたのが印象的でした。この手のドラマにおいて焦点となる周囲からの目線や主人...

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2016 映画トップ10

去年は50本程映画館で映画を観ました。 週一で観たと考えれば上出来だと思います。 1位 ロブスター 2位 リップヴァンウィンクルの花嫁 3位 ちはやふる(上下) 4位 SHARING 5位 サウルの息子 6位 溺れるナイフ 7位 イレブンミニッツ 8位 キャロル 9位 淵に立つ 10位 灼熱 「シン・ゴジラ」「君の名は。」「この世界の片隅に」 この三本は去年という枠に収まらないのではという自分でもよく分からない理由から外しました。 邦画の出来が目立った一年でした。 どれも傑作です、ディスク化されているものもあるので三連休暇な方は参考にしてください。 1位 ロブスター 2位 リップヴァンウィンクルの花嫁 3位 ちはやふる -上の句・下の句- 4位 SHARING 5位 サウルの息子 6位 溺れるナイフ 7位 イレブンミニッツ 8位 キャロル 9位 淵に立つ 10位 灼熱...

小松菜奈の魅力が2017年も事件です!

事件です! 小松菜奈の魅力が2017年も事件です! 小松菜奈の真の魅力というのは端正な顔立ちから想起させる高貴さや気高さといった他人を寄せ付けない絶対的なものではなく、このスマホの動画を編集したような映像から滲み出ている明るさや邪気のなさだと思っています。   去年出演した多くの映画でその魅力はきちんと切り取られていて、ヒロインとしての扱われ方に間違いはないと思ったんだけど、その中でも特に山戸監督の「溺れるナイフ」のあの明るさや邪気のなさかから溢れる美しさを最高に美しいままに汚すという見せ方というのが、真利子監督の「ディストラクションベイビーズ」の美しいものを汚すという単純な振れ幅よりも圧倒的に強く残ったことが思い返されます。 今年のニューヒロインはいかに。 明けましておめでとうございます。...

紅白実況マラソン2016

今年も紅白実況マラソン完走しました。 これやると毎年どっと疲れて年を越すはめになるんだけど、やっぱ一年の最後に一年を総括する優良なコンテンツがあるからと信じて。 たのですが、今年は例年にも増して「復興」と「オリンピック」のごり押しで「頑張ろう日本」「まだやれる日本」というメッセージに辟易。エンタメ系の演出も(ゴジラやPPAP)も総じて質が低く見ていていたたまれなかった。 それでも一応パフォーマンスベスト3 3位 セカイノオワリ 前半のジャニーズや若手のよく知らない曲が続く中で、ポンと出て来て短い尺ながらも自分たちの世界観を展開できるパフォーマンスに安心した。 2位 宇多田ヒカル 圧倒的な存在感。期待を一身に背負わされ、それに事務的に奉仕する姿には何年か前同じ紅白の舞台の中森明菜を連想させた。 この世と隔絶された僕らの知らない世界から歌っているような姿だった。 欲を言えば来年のデビュー20周年で同じく98年デビューの浜崎あゆみ・aiko・椎名林檎と共に見たかった。 1位 欅坂46 贔屓です。好きだらか、最高でした。 最後にちょっとした気づき。 若手の歌にほど強い政治的なメッセージが込めら...

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感想 『逃げるは恥だが役に立つ』 「夫婦を超えてゆけ!― 大ヒットと影響の先を考えて ― 」

メリークリスマス。 これから「のん」の映画一人で観に行ってくるけど、これってクリぼっち的なやつなのか。 逃げ恥の感想です。 「夫婦を超えてゆけ!― 大ヒットと影響の先を考えて ― 」 今年、国民の注目を最も集めた民放ドラマといっても過言ではない。 多くの方が話題を共有し、期待を最後まで裏切らず視聴者を楽しませてくれたのにはいくつかの優れた点があったからだと思う。 1、それぞれの楽しみ方・盛り上がり方 このドラマのメッセージは基本的に女性へと向けられていた。そしてその年齢層がドラマが進むにつれて大きな広がりをみせていったように思う。 これは、物語の後半から星野源演じる平匡(36)と新垣結衣演じるみくり(26)のパートに加え、仕事一筋で恋愛に縁がなかったみくりの伯母で石田ゆり子演じる百合(49)のパートを並行して描いたことが大きい。 (※年齢はドラマの設定に基づいている) それにより仕事や恋に新しい価値観を持つ20代30代のみならず、それより上の世代の女性からの共感を得ることに成功した。 さらに良かった点として、ドラマにメッセージや社会性などを期待していない視聴者にも楽しめる要素が多くあっ...

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テン年代アイドルは10年に満たない短い期間にその歴史が凝縮されている。

彼女たちが一丸となって作り出したこの15分でテン年代に「アイドル」が時代の一端を担ったことが良く分かる。 比べるとおかしいと言われるかもしれないけど僕これ見て思い出したのが、 BEAMS40周年記念で今年作られた「今夜はブギー・バック」のMVなんだよね。 あれはファッションを軸に時代の鍵となる人物を矢継ぎ早に投入して歴史をプレーバックするという試みだった。 もちろんここにはファッションという「文化」と40年という「時間」の存在が欠かせなかった。 一方、テン年代アイドルは10年に満たない短い期間にその歴史が凝縮されている。 プロデューサーの存在や面白い楽曲が集まる仕組み(ミライボウルのサビの転調なんか知っててもビビる) 自己表現方法や集団としての色の出し方など。 一連の流れて見た時にそこに幾つもの背景やそれに紐づく人々の軌跡が確認できれば、 僕はそれを「文化」と読んでも良いと思う。...

2016年、アイドル界に新たな革命児が生まれてしまったことを証明している

えぐいくらいに神ってますね。2016年、アイドル界に新たな革命児が生まれてしまったことを証明しているとしか思えない。 なるほど前回のポストで動的なヒロインの資質としての身体能力という話をしたが今回このパフォーマンスを見て、 以前書いたこの「身体能力」というのは、精神と分離した肉体(容器)のスペックなんだという事に気づかされた。 80年代から続く日本的なアイドルの最も重要な資質として、消費される事を意識しながら葛藤の中で立ち位置を咀嚼し役を振る舞う(=セルフプロデュース)という定義がある。 つまり、自身の立ち位置を割り切りアイドルとしての精神を反映させる道具として肉体は存在していた。 そこに風穴を開けたのが前田敦子だった。 彼女はグループ在籍時から自身の中の激しい葛藤や悩み、つまり「なぜ?」という問いを晒し続けた。その根柢にはアイドルとして折り合いをつけるべき精神と肉体のアンビバレンスがあり、結果それが受け手の「なぜ?」を誘発することで図らずとも彼女は唯一無二性を獲得した。 裏を返せば彼女にはアイドルにおける典型的な精神と肉体の関係がしっかりと意識されており、彼女に生じていたことは極めて...

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SMAP解散に思いを馳せるということ

ここに書く事が欅坂さんのことばっかりになってるんだけど大丈夫。12月になりました。今年も恒例の2016ランキングやります。 「映画編」「ドラマ編」「小説編」 今年は邦画が大作揃いでしたね。 と、今年を振り返るのに忙しい12月ですが、 今日あーこれは毎年恒例だからとかではなく、今年の12月に絶対にしなければいけないということがあったと自覚した訳です。 ずばり、SMAP解散に思いを馳せるということ。 まだ実感が全く湧かないんだけど、年末に近づくに連れ焦燥感にも似た浮足立った感覚が襲って来てそれが大きな哀しみとして自分を飲み込んでしまいそうで。 解散に合わせて異例のSMAP関連新書ラッシュ。 全て12月刊だそうです。(ソースはTwitterですが…) 朝日新書・中川右介『SMAPと平成』 講談社現代新書・矢野利裕『ジャニーズと日本』 光文社新書・太田省一『SMAPと平成ニッポン』 宝島社新書・速水健朗『大人のSMAP論』 SB新書・松谷創一郎『SMAPはなぜ解散したのか』 親書でタイトルのインパクトが重視されるのは自明のことですが、 僕はこのタイトルにあるように「SMAP」が「平成」や「日本...

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新語・流行語大賞

こういう時だいたいの書き出しは、 「早いものでもうこの時期がやって参りました。」 なんだけれども、今年は年初めからぶっ飛ばしの一年だったので正直これだけの言葉では表現できないくらいですね。 まず、理由は不明だが候補が30個と去年より20個も減っている。 結果、「PERFECTHUMAN」や「生前退位」「安倍マリオ」など一時ではあるものの多くの人の会話に上がったであろう候補すら外れている。毎年5個くらいはググってふむふむとやる楽しみが失われたのは少し残念です。 今年はマスメディアが広く伝え多くの人が前向きな姿勢で共有できる話題から、ネットを中心に極端に焦点を絞った(言い換えると二次創作や炎上という言葉がしっくりくる)踏み絵のように機能させられたキーワードが多いという事を感じました。 マスメディアの衰退というのは今や使い古された表現ですが、僕個人の見解としては「新語・流行語大賞」というのは近年においてもなおテレビなどでの発信が元となることが非常に多く、つまり未だ流行発信の殆どがマスメディアによって担われているという事を認識する機会こそがこの「新語・流行語大賞」の特徴だと思っていました。 し...

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2.5次元を生きる〜VR・ポケモン・コンビニ人間

予告編だけだけど、久しぶりにシビれた。 最近、現実がグラっと波打ち足元が不安定だと感じるような事を経験して、そのことからこの現実が如何に不確かなもので成立しているかという事を感じ、さらに大概の人間はそれを意識することなく当たり前に受け入れているという事を実感した。 僕に起こったこの現象は恐らく「めまい」で、それは医学的なものではなく、どちらかといえば映画表現的なそれに近い。 疑う余地もない現実(リアル)に風穴が生まれた瞬間に感じる、好意的ですらある現象だ。 それは前提としての現実を要する。現実がシェイクされる事で起こるのが「めまい」だが、僕はこのシェイク(前述した風穴とも同意)というものが今回のテーマである「2.5次元」を創出する、3次元(リアル)-0.5次元の「-0.5次元(引くところの0.5次元)」なのだと思った。 以前、信頼のおける友人たちに「外出というのはギャンブル」や「人付き合いのコストとベネフィットについて」などのリアルの息苦しさや世知辛さについての考えを披露し割かし当たり前のように同意をいただいたということがあった。 今では僕はコミュニケーションというものを全く度外視した...

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最近の村上春樹について書かれた文章で「おっ!」となったものを紹介。

今年ノーベル文学賞1週間遅れてるんだけど 果たして村上春樹が取るのだろうかというところで、 僕個人としては村上春樹という作家には何の思い入れもないのだが(刊行された小説は全部読んでいて何の思い入れもないのだからおもしろい)もしかすると今年あたりさらっと取る可能性があるのではないかと思っているので、 最近の村上春樹について書かれた文章で「おっ!」となったものを紹介。 ※完全なる引用・転載です もし明後日取ったらみんないいねしてね。 それまではしなくていいから。 ➀「ノルウェイの森」と「君の名は。」 東浩紀 ひと月ほど考え続けた結果、ぼくは、「君の名は。」はたいへんな傑作であり、ぼくがいままで擁護してきた価値観を見事に体現した作品でもあるが、いまのぼくとしては絶対肯定できない作品だという結論に達した。言い換えれば、この作品に行き着いたセカイ系の想像力を肯定できないという結論に達した。 — 東浩紀 (@hazuma) 2016年10月5日 連動して呟けば、ぼくはいままで村上春樹を高く評価してきたし、それ自体はまちがいでもないと思うが、かつて1990年代、「ノルウェイの森」の後の春...

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映画『her/世界でひとつの彼女』 – 映画の中に自分を見る ~ 感情移入の瞬間の錯乱について –

観た映画の感想です。 『her/世界でひとつの彼女』スパイク・ジョーンズ監督。 去年映画館に観に行った映画の中で、最も感情を揺さぶられました。 理由は簡単で、映画の主人公・セオドアにびっくりするほど感情移入してしまったからです。 ストーリーを簡単に説明すると、離婚調停中の主人公ホアキン・フェニックス演じるセオドアはルーニー・マーラ演じる別居中の妻キャサリンの事を忘れられず、淋しさを紛らわすため最新の人工知能OSを購入しそれ(彼女)に恋をするという話です。 ざっくりとした物語構成ですが、前半部分で人間(男性)の持てる言い訳の全てに寄り添う事が可能な対象はもはや人間(女性)ではないという仮説が示され、しかしラストでは友人と励まし合いなが前へ進もうという主人公の心境の変化が描かれます。 つまり、人いうもの限界(欠損部分や至らない点)を無残なまでに露わに示しながらも、それでも人を救済しうるのは他でもない人であるという、ある種辛辣で逃げ場のない現実的なメッセージを打ち出した映画だと言えます。 特に最後の点において、個人的には閉塞的な感覚を抱きながら結局どれだけテクノロジーが進化しても人の淋しさと...

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滝口悠生『愛と人生』を読んで考えること

3月11日ですね。 あれから4年、早いのか遅いのかその判断が遠のく辺りに震災の風化を現実のものとして感じてしまいます。(個人の意見です) 今日ある小説を読み終えました。 とても偶然にその本の最後には、それまでとは何の脈絡もない形で震災を思わせる記述がありそれによって今僕はこれを書いています。 だから、今日僕がその本を読み終わらなかったらここにこれを書くことはなかったでしょう。 今日、地震が起こった14時46分に黙祷を捧げたり自身のSNSに書き込みをした人が多くいたと思います。 その中に一つ興味深いツイートを見つけました。 呟いた人(ある文芸批評家の方です)の名は伏せて転載させて頂きます。 「2万人近くの死、というのも、よくわからない。交通事故であれなんであれ、人が死ぬのは哀しいだろう。しかし、知らない二万人よりも、家族とか親しい一人の死の方がつらくないかね。(中略) 集団の死を、集団で慰霊するということの意義が、リアリティを持った形で想像できないというか、それは一体どういうことなのか? っていう本質が未だにわからない。親しい人を喪った人の気持ちを想像する。これはわかる。それが数万人分。...

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感銘を受けた本ベスト10

ようやく書き終わりました。 去年発売された中で個人的に感銘を受けた本のベスト10です。 今回は小説にしぼってます。 10位 キャプテンサンダーボルト 伊坂幸太郎/阿部和重 著 図書館では借りれそうになかったので、去年唯一購入した単行本小説。 人気作家2人が4年かけて900枚も書いたと発売前には特設ページなんかも作られ、書き下ろしの本に読む前からこんなにも興奮したのは久しぶりでした。 一番の特徴は、なんといっても共著であること。 これまでも話題になった共著というのは幾つかありました。 今ぱっと思い浮かぶのは、江國香織と辻仁成の『冷静と情熱のあいだ』ですかね。同じく14年に出版された中田永一(乙一)と中村航の共著『僕は小説が書けない』は、芝浦工大が開発した「物語生成支援ソフト」というものを使って書かれた本筋とは若干違う話がしたくなる書き手の存在の問題に切り込んだ作品でした。タイプは異なれど本作同様話題になった共著と言えるでしょう。 ただこの作品は、共著という形を取りながらも従来の章ごとに作家が交互に書いていくというようなスタイルを採用しません。 ゆえに読んでいても一見何処をどちらが書いてい...

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【2014年】テレビドラマの総括

こんばんは。気づけば、2014年もあと僅か。 年末になるとテレビやネットでは「今年を振り返ろう」みたいなものをよく見かけます。5年ぐらい前はこんな煽り文句みたいなのが世の中に氾濫していることもなかったなと思うのですが、なんと言っても今や一億総表現者ですからね。時代です。 「今年なにやってたかといえば、友だちとやたら人狼してた。楽しかったなー(古市憲寿)」みたいに今年の総括を1行ぐらいでスマートにまとまれれば一番いいのですが、かくいう僕もここ数年は1年を総括する意味で主に「フィクション」において個人的なベストコンテンツを文章にしておくというやっかいな習慣がありまして、せっかくなので今年もそんなこと書きながら2014年の皆さまとお別れしたいと思います。お世話になりました。 今年は本当に話題に事欠かない年だったと思います。 ざっと振り返っても、 ・オリンピック ・ワールドカップ ・集団的自衛権限定容認 ・消費増税 ・解散総選挙 などといったスポーツ・政治の分野から、 ワイドショーを連日賑わせた会見ラッシュ、 個人的には一番大きいと思う「いいとも」と90年代以降のテレビというコンテンツの終焉、...

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文化系トークラジオLife「フィジカルの逆襲」に対する考察

文化の日ということで、軽いコラム的なものを書いてみました。 出自というか大体のベースは先月26日の文科系トークラジオLife(トークテーマ「フィジカルの逆襲」)の感想になります。 ポッドキャスト配信されているので気になる方は、こちらから。 http://www.tbsradio.jp/life/20141026/ 個人的には珍しくカレンダー通りの3連休で、AKBの劇場公演が奇跡的に当たったり、1日の映画の日にあわせて「ニンフォマニアック」前後編まとめて見るとか、大学祭のトークイベントに行く等々、予定を詰め込んでいた訳です。 そして三連休も終わる今この瞬間ふと思い返してみると、僕のこの休みの予定って全部「コンテンツ消費」に割かれていた訳です。 そして、少し疲れています。 別に心地よい疲れだとかの曖昧なものではなく、それは身体に直接影響を及ぼす程度、実体を伴ったくらいに。数にも因りますが、本読んだり映画観たりラジオ聴いたりドラマ観たりしても案外疲れるものです。 そんな僕の事例は一旦置いておいて、最近の僕と近しい世代の人々は「コミュニケーション」つまりソーシャルな関係に疲弊しているという事が...

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【2014年】7月期 テレビドラマの総括

お久しぶりです。秋の夜長いかがお過ごしでしょうか。 お馴染み定期ポストとなっているテレビドラマについて。 4月期に出来の良い作品が多くたくさん書いた覚えがありますが、1位をつけた「続・最後から二番目の恋」に触れる前にPCのデータが飛び、結果中途半端に終わってしまいました。 なので今回は要点を整理しながら極力短めに一気に書きました。 内容としては、前回クールのドラマの中から面白かったものや話題になったものに触れ、最後に今始まりつつある10月期のドラマをちょこっと紹介できればと思います。今回クールのドラマは見ごたえのある作品が多い気がします。今からでも間に合うと思うので、これ読んで一つでも面白いドラマを見つけてくれればと思います。 では7月期のドラマの総括いきます。 7月期は巧妙に隠されたハズレドラマが多かったです。 正直面白かったのは3つあるかないかというところです。 まぁこれくらいが1クールのデフォルトなんですね。 触れるドラマ列挙しときます。 ・HERO ・若者たち2014 ・昼顔 ・聖女 ・家族狩り ・おやじの背中 ・アオイホノオ (ベストはペテロの葬列なんだけど、ここでは触れませ...

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【2014年】4月期 ドラマ時評 各論②

4月クール連ドラ、その3『セーラーゾンビ』についてです。 相当長くなってます。 ゾンビと天使の強烈な二項対立が示すものは! 数多の佳作を抑えてなぜこの作品良かったかというと、きちんと現代社会の問題を捉えていたからです。端的に言えばアイドルと現代社会の関係性についての批評として機能していたということです。 今や「アイドル」は現代社会を語るうえで軽視することが出来ない存在だと思います。 この作品の主演3人(大和田南那・川栄李奈・高橋朱里)がAKBだったというところから、主観的な判断が先行していると思われても仕方がないのですが、僕は恐らくこの作品にAKBが出ていなくても変わらぬ評価をしていたと思います。 勿論、初めは大和田主演ということが大きな魅力となっていたのは事実ですが。 しかし、この作品を通じて提示された世界は、物凄く現実的で恐ろしい且つそれがハッピーエンドに見えてしまう歪んだ現代社会有り様そのものだったと思います。 そういった意味でも、当作はアイドルをテーマの一つとして掲げた「あまちゃん」でクドカンが果敢にチャレンジするも不完全燃焼に終わった「アイドルと現代社会の関係性」について、見...

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【2014年】4月期 ドラマ時評 各論①

4月クール連ドラ、その2です。 『BORDER』 『MOZU』 『ロング・グッドバイ』 『リバースエッジ』 『アリスの棘』 の順に書いてます。 早速いきます。 僕は基本的にメモを取りながらドラマを見るのですが、最終回までに見終った時メモの総量が圧倒的に多かったのが『BORDER』でした。 ドラマ評論家の評価も軒並み高く、初回で圧倒的な世界観を示した裏番組の『MOZU』に視聴率でじわりじわりとにじり寄り、ドラマ中盤から後半にかけてはかなり話題になった作品です。 この作品が面白かったのは、死者と対話できるという設定にリアリティを吹き込み続けた金城一紀脚本の手数の多さと、それに伴う連ドラに於いては極めて異例とも言える小栗旬演じる石川という刑事の一人称視点の歪さだったと思います。 また、最終回のエンディングも連ドラとしてはかなり異質なものでした。(特にテレ朝の刑事ドラマとして考えると) 主人公が捜査中に拳銃で頭部を撃たれた後遺症により死者と対話が出来るようになる、つまり死者(被害者)との対話から犯人(加害者)を捕まえるという設定で物語は進行していきます。 勿論これだけを読むとなんてつまらない子...

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【2014年】4月期 ドラマ時評 序論

忙しすぎて書けてなかった、前クールのドラマ評です。 今回のクールのドラマも中盤に差し掛かっていて今更感が否めませんが、これを書かないとなと思ったのは、純粋に前回のクールのドラマがどれもかなりレベルが高かったからです。 そして、今回は書いていたらあまりにも長くなったので、少し小分けにして今日から一週間ぐらい毎日少しずつ投稿していこうと思います。 初日は各ドラマの具体的な話には触れません。前置きのようなものを書いた部分を投稿します。 前クールで最後まで見たもの。 『極悪がんぼ』 『今夜は心だけ抱いて』 『花咲舞が黙ってない』 『銀二貫』 『BORDER』 『MOZU』 『続・最後から二番目の恋』 『アリスの棘』 『リバースエッジ 大川端探偵社』 『セーラーゾンビ』 『ロング・グッドバイ』 『ルーズヴェルト・ゲーム』 『モザイクジャパン』 『プラトニック』 平均すると1日2本ずつ見ていた計算です。 改めて僕は現実に非現実を流し込むという行為をしなければ生きていけないなと痛感しています。 『ファースト・クラス』を見逃してしまったという心残りはあります。 冒頭でも触れましたが、前回クールはゼロ年...

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フジロック

26日日帰りでフジロック行って来ました。 26日も27日も仕事で、まぁ無理だろうと思っていたのですが、26日の野球地方大会が17時ぐらいまでに全て終わり「帰らせて」と懇願したらあっさり通って、急いでレンタカー手配して苗場まで高速ぶっとばして2時間。 ずっと念願だったArcade Fireのライブに間に合いました。 あまりに疲れすぎてて開始の2130ぎりぎりまで横道みたいな草原でぐうぐう寝てたら最前のところ入れなくなってて、とりあえず行ける範囲の一番近いところまで行って開始を待ちました。かなり寝たこともありコンディションMaxで臨むことができました。 まずはセトリを。 ⒈Reflektor 2.Flashbulb Eyes 3.Neighborhood #3 4.Rebellion 5.Joan of Arc 6.The Suburbs 7.The Suburbs 8.Ready to Start 9.Neighborhood #1 10.We Exist 11.No Cars Go 12.Haïti 13.Afterlife 14.It’s Never Over 15.Sp...

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懐かしさにある不思議な実存

「思い出のマーニー」仕事終わりで観て来ました。 僕はそれほどまでにジブリに思い入れがあるわけではなく、ましてやアニメーションは僕の中ではかなり少ない方の専門外的文科系コンテンツです。だから将来自分の子供がアニメが見たいななんていうもんなら「ファンタスティック Mr. Fox」を与えて、この中にアニメに大切な事全部詰まってるからこれだけ見とけばいけるでとか本当に言おうと思ってます。 ジブリ作品が新しく公開される度にそんな事を言い、2chのジブリタイトルを組み合わせて一番面白い奴が優勝っていうスレが楽しみであったりするのですが(今回優勝「こんなん坂ちがう崖やんおすなや」次点「恩をカタクリコで返す」) 今回のマーニーはポスト宮崎駿という部分で個人的に関心がありました。 感想を一言で言うと、観て良かったです。 前述したポスト宮崎駿という側面が作品には如実に顕れていました。 宮崎監督が耕してきた広大な敷地の畑を、敢えて避けながら作られたと言っても過言ではないと思います。その避け方が、宮崎監督のフィールドを挟むようになされていたという印象がありました。 現実と虚構の範囲の中である意味凝り固まってい...

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